Slackのスレッドに関する議論がある。これはSlackのスレッドを使うなと言う主張がされているということで、僕はこれに対してSlackのスレッドは必要悪であると思っていたので、どうしてそう言う議論というか主義は出ているかを知りたくなって、同僚に聞いた。
聞こえてきたのはスレッドを使うとどこで議論をしていたのかわからなくなるので困ると言う意見や、スレッドがあると追いかけるのが大変になる、という意見であった。それに対して僕がタイムゾーンが異なるとスレッドは議論が追いやすいと言ったら、ある同僚がそもそもSlackで議論をしない方が良いのではないかと言う話をしてくれた。
なるほどそういえば、思い返してスレッドの反対意見を強く言う人たちは現旧クックパッドの人が思い浮かぶ。これは確かに何か関連性があるかもしれないと思い返したときにクックパッドのグルーパッドを思い出したのである。
グルーパッドとは元CTOの舘野さんが作った素晴らしいプロダクトで、簡単に言うと、社内ウィキと社内ブログを統合したものである。プロダクトとしての凄さはその機能性だけではなく、カジュアルに自分の考えを表明できると言う文化また素晴らしいものであった。これにより、いろんな部門の社員が思い思いに自分の考えを表明して、それに対するアンサーソングを買いたいなんてこともあったりした。そのグループパッドを書く上でのある種の教育の一環として、フロー情報とストック情報と言う概念を皆学んでいたのである。(なお、グルーパッドの大きな欠点は、消す権利がないことである。壮大なポエムを書くと退職後に入社した友人に「記事読みました」と言われ穴があったら入りたくなるのである。)
フロー情報と言うのは、Slack等のチャットのように時系列でテキストのやりとりが記されたものである。これに対してストック情報とは時系列とは関係なく、比較的構造的に情報をまとめて、それを後から参照するために残す情報であるウィキペディアみたいなまとめてある情報が、まさにストック情報の代表である。
では、議論と言うのはフロー情報であろうか、ストック情報であろうか、良いポイントである。一見すると議論と言うのは対話を重ねていき、考えを深めていくので、フロー情報のように見える。
しかし、僕のいる会社のように、グローバルで複数タイムゾーンのチームがメンバーが協力をする場合において、大前提として、同期的なコミニケーションがほぼ不可能なのである。同期的なコミュニケーションを取るには、限られたオーバーラップタイムを有効活用することが多いだろうが、この貴重な時間はとても限られている。そして今参加している日本、北米、ヨーロッパなどのような複数タイムゾーンにまたがったプロジェクトメンバーがいる場合は絶望的である。じゃあどうすればいいのか。
いくつかのアプローチがあるだろう。例えば機能ごとに開発拠点を集約して、タイムゾーンをまたいだ議論を不要とし、同期的に全てやりとりをすると言う方法。今もおそらく変わっていないだろうが、Googleなんかがこの方向であると聞く。
もう一つのアプローチは、アマゾンの6ページのドキュメントではないがまとめたドキュメントを書くと言う方法がある。これはどうもすると官僚的になりがちなので、日本の伝統的な大企業に言う人はちょっと嫌な感じがするかもしれない。僕もそのうちの1人だった。しかし、考えてみて欲しい。グローバルにバラバラになった人々の間での議論や、めちゃくちゃ忙しい時間のないCTOみたいなエグゼクティブに対して、過去のスラックの議論を見てくれと言うのは、その人数分だけの無駄な労力が発生するのである。なので、今となってはドキュメントで構造化をして1度読めば、大体ポイントをつかめるようにするのが良いのでは、と言う気持ちになった。
おそらく会社での多くの議論は、JIRAのチケットやGitHubのissueなんかのコメントのやり取りでやることが多い気がする。ある意味、ストック情報とプロ情報の間の子のようなものである。
ここまで書いていて気づいたが、要するに議論で必要なのは、Pros/Consやtl;drを書いて、複数の選択肢の中からどれを選ぶのかというところを用意してあげて、まとめるための整理された情報が大事な気がしてきた。散髪的な思いつきを並べ立てても、メモリのキャッシュに全部乗るような人でなければそれを深く理解することはできない。そして議論に参加する多くの人は僕も含めて凡人である。なので、生の材料を渡しても議論は深まらないのである。
これをUIの面から考えると、1行のテキストボックスで入力するようなプラットフォームでは、当然ながら構造化された文章を書くのは非常に難しい場合によっては、表や画像、そしてそれらのキャプションも必要になってくるかもしれない。そうすると複数行のテキストボックスにリッチな情報を加えられる必要があるであろう。
こうした特性を踏まえてから、タイトルの「チャットでチャットするな」というtakkanmさんの言葉を振り返ってみると、議論をする上で必要なのは、散髪的なアイディアをパラパラと並べ立てるのではなく、情報を料理し、それを食べやすい形にして用意する。そしてそれをもとに意思決定をするというのが大事なのである。
チャットでチャットをして良いのは、仕事の環境ではまぁないでしょう。もちろん雑談をする。あるいは一言二言のやりとりで完結できる話であればチャットに向いているであろうが、Slackのスレッドは議論を誘発しやすいので嫌われているのであろう。
ちなみに、クックパッド関係者が、それともう一つの理由として僕が思っているのは、彼らは原則チャットのログを全て読むと言う人は結構多いのである。(後はチャットでのコンテキストスイッチを厭わない。)で、スレッドを追いかけるのはスクロールしていくだけでは見えないので、非常に効率が悪い。なるほどね。しかし冷静に考えると会社のSlackでは、すべてのログを一通り読む人と言うのは、まぁ数は少ないでしょう。チャット耐性がある人と言うのは一握りなのかもしれない。
まとまりがないが、この辺で。
この文章は、iOSのdictationで音声入力をしたものを手直しして作りました。結構便利。