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アク取りが楽しい。そうだ、果物を煮る時、私は黙々とアクを取るのが楽しいのだ。
高価な果物を買ってウキウキしながら食べるものの、完食できない予感にかられることも多い。そんなとき、無理矢理スムージーにするのだが、それにもちょっぴり飽きてしまう。人とはなんて贅沢な生き物なんだ。
食べ物を悪くしてしまうのは忍びない。否、高いものだから粗末にしたくない。そう考えた結果行き着いたのが、長期保存ができるものへ変えること。そう、加熱だ。
果物のジャムやソースを作るのって、素敵な大人にならないとやれないんだと勝手に思っていた。でも電子レンジでも作れてしまう。それこそ、小さかったあの頃でも出来たんだ、本当は。なんて考えながら果物を雑に切り分けて、鍋に放り込む。
私はスモモが好きだけど、たくさんは食べられないのだ。両親にお裾分けしたものと、生食用以外は全て煮ることにした。この時期によく作るジャムのようなソースのようなもの。ジャムにしては緩くて、ソースにしては硬い。毎回、若干砂糖の量が違うんだよな。本当はスケールを使ってきちんと砂糖の量を計るべきなんだけど。
ぐつぐつと、煮る。心が無になっていく。ラジオの声と、猫が身じろぎする音、ぐつぐつぐつ。アクをとって捨てる。時折、猫に声をかけて、ラジオの音に微かに笑う。果物を煮るのは、忙しないタイミングではやりたくない。こうやって穏やかな心持ちになれるからこそ、休日の昼にやりたい作業だ。アクをとる、とる。すっきりとしたクリアな色のジャムもしくはソースができる。味見、うん、いい感じ。
こうやって、私は一年のうちのどこかで果物を煮るのだ。