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柔らかな甘さだね、豆大福。きみは優しさでできている。だって、食べるだけでしばらくは他人に理不尽な怒りを覚えないで済みそうだから。
甘いとしょっぱいが同居する美味しいものが好き。食べる時にどきどきするけれど、美味しいと分かると二倍美味しい気がするからね。甘いのにしょっぱい。しょっぱいのに甘い。不思議だなあという気持ちを飛び越えて、美味しいという言葉がでかでかと私の頭の中を占拠するのだ。
ちなみに、幼い頃の私はみたらし団子を甘いものと認識していた。近所の和菓子屋さんのみたらし団子が甘さが強くてね。今食べても甘いなと思う。多分あれ、団子自身も甘い気がするんだよね。あれはあれで美味しいからそのままでいてほしい。んで、甘いものだと思っていたみたらし団子、他のお店のものが甘くてしょっぱくて大層驚いたんだわな。まさに、認識が塗り替えられるってやつよ。今まで知っていたみたらし団子とはなんだったんだってね。最初ははちゃめちゃに戸惑ったもんです。懐かしいね。今は甘くてしょっぱいもんだと思っている。
その点、豆大福は小さい頃から今に至るまで甘くてしょっぱいもんだ。豆のしょっぱさを幼い頃はいらないと思っていたんですが、もうね、必要なんですよこのしょっぱさが。お汁粉などの箸休めのしょっぱいものの役割に近い。お店によって豆のしょっぱさの塩梅が違うのもさらにいい。全部違うのでいい。美味いから。全部美味しいんだよ豆大福ってやつは。
豆大福っていいよな。食べるとほくほくしちゃう。まるで私が豆大福になってしまったかのよう。だなんて、そんなわけはない。私は人間のままだし、理不尽な怒りに今日も呑まれている。ままならんもんです。