
出かけた先で沈丁花が咲いていることに気付き、足を止めてしまった。小ぶりな花がポンポンのように円を描きつつ、良い香りを放っている。思った以上に沢山の花が咲いていて、その白と濃いピンクのコントラストの美しさに心が洗われた。やはり沈丁花は良いな。一番香りが好きな花である。そして、私にとって春の訪れを思わせるのは沈丁花なのだと、毎年思いながらその良い香りを楽しむのだ。
そうだ、春が近い。春が近いとどうなる?最後の親知らずの抜歯の日が近くなる。
予約の取り方がたまたまそうなってしまっただけなのだが、抜歯と抜歯の間が一か月以上あく日程で今まで親知らずを抜いてきた。もっと間隔を縮めようと思えばできたが、今思えばこれくらい間をあけてよかった。親知らずを抜いて一か月で全回復、とは正直ならないが、一か月も経てばどうにかこうにか日常生活を送れるようになる。それに全回復を待つと次の親知らず抜歯が相当先になる。そこまで待つ気はないので、一か月おきの抜歯スケジュールは都合が良かった。
親知らずを抜いた後に一番難儀するのは食事だ。まあ正直、二回目以降の抜歯は大分なんでもかんでも食べるようになっていたが、それでも抜歯した側を使わないよう、意識しながらの食事となるのでちょっと疲れてしまう。抜歯してから一か月も経てば、ある程度日常通りに歯が使えるようになるからね。そういうこともあって、いい感じのスケジュールを組んだなと思っている。
春を予感させる甘い香りを放つまるい花。それらを存分に眺めてから戦士の顔で病院に向かう。そうだ、私は親知らずを抜く。口内に残る最後の親知らずを抜くために、いざ出陣である。