行けない朝

チハヤ
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その日は前兆がある時も稀にあるが、概ね唐突にくる。

朝起きた瞬間にはわかっていて、だましだまし洗面所に立って鏡の中の自分と対峙したとき、"あぁ、今日は行けない。"と思った。

一応社会人として、急に休むことに対する申し訳なさというか不甲斐なさは感じる。ただまぁ、特段急ぎの用事がなかったので、気持ちの方を優先した。こういう小さな違和感を真面目さが故に無視し続けて体調を崩し、元通りの生活を送るのに長い時間を要している人を、周りでたくさん見ているから。

20代前半の頃と比べると、頑張れない日が増えた。気合いと根性で気力を奮い立たせることができなくなった。社会人になると学生に比べ、年齢的な区切りが薄くなっていく気がする。歳を重ねるにつれ、当たり前だが心も体も少しずつ変化しているはずだ。ただ、多少やることは違えど「仕事をする」というサイクルを繰り返す日々だと、その変化に気付きづらくなるのかもしれない。

以前はもっとできない自分を責めていた。でも今は、同じようにできなくてもいい、それは当たり前だと少し肯定できるようになった。自分を守れるのは自分だけだと。それでも、できれば近年中に、"行けない朝"がくる前兆を掴んで、事前に休みを取れるようにしたい。それができる時はいつになるかわからないが、きっとそれはまた一つ大人に近づいたときかもしれない。