海士町最終日と境港

チハヤ
·

明け方、夢を見た。海のよく見えるホテルの部屋からまた朝焼けがやたらキラキラしていて、すぐにスマホのカメラで撮っていた。ちゃんと目が覚めてカメラロールを見るとそんな写真はなく、実際の空は少し曇っていた。でも昨日の雨は止んでいて、厚い雲の奥の方に朝日が見える空も、綺麗だった。

朝風呂をし、開放感のあるラウンジのようなスペースで少し読書をしてから、朝食会場へ向かう。ごはんのお供がたくさんある健康的な朝ごはんで、ご飯をお代わりしてしまった。

朝食を済ませたら、ホテルから徒歩5分程度のビーチへ散歩に行った。海に向かう道は涼しい風が吹いていて、頭上からはたくさん鳥の声が降ってきた。視界が開け、ビーチが見えた時、なんだかほっとした。

穏やかな波、前日が雨とは思えないくらい澄んだ海水。思わず裸足になり、少し波打際に近づいた。撫でるみたいにそっと、波が足先を濡らした。

釣りをするような海に張り出したアスファルトの上を、痛い痛いと言いながら素足のまま歩き、先端まで行って足を洗った。そのまま寝っ転がる。誰もいない、心地よい"ぽつん"という感覚だった。体を起こしてもしばらく、ぼーっと波の行き来を見つめていた。ここに来られてよかったなと改めて思った。

9時50分、フェリーが海士町の港を出発した。案外名残惜しくなかったのは、最後に心ゆくまで海を眺められたからかもしれない。それに、過ごしたいように過ごせて満足だった。

3時間半船に揺られた後、本土の境港という港に到着した。降りてすぐ海鮮丼を食べたが、海士町で食べた魚の新鮮さには敵わなかった。美味しくないなというより、あの時は本当に美味しかったんだと改めて実感した感じだった。

その後は海鮮を一般向けに販売する市場のような場所を眺めたり、水木しげるロードという観光感万歳の道を歩いたりした。その通りは妖怪たちの像や鬼太郎にあやかった店が立ち並び、見たことのないお茶目な顔の妖怪を見つけたりして案外楽しかった。

最後に空港近くの喫茶ウイングという老舗喫茶店に入り、プリンパフェを食べた。旅行の最後の食事である。散々歩き回ったところに、甘さが沁みた。

無事に帰宅し、恋人の顔を見たら流石にほっとした。一人旅は、帰ってきたら人が待ってくれている幸せを改めて感じられる。そして、旅の思い出を話せる相手がいるのも幸せだなと思った。

この度は、小さな初挑戦がいくつかあった。ひとりで飛行機に乗ること、ひとりで船に乗ること、1人で島に行くこと。やってみたらなんてことない。でも行く前の自分よりも、終わった後の自分の方が世界がほんの少し広くなった気がする。行きたいと思えば、どこにだって行けるんだと、より思えるようになった。

穏やかで静かな海の景色を独り占め出来たことも、初めましての人たちが沢山話しかけてくれたことも、1人旅の醍醐味だ。自分の気のみ気の向くまま好きなことをできる、不特定多数の人がうじゃうじゃいない、そんなことが自分にとってここまで心地よいのだいうことを改めて感じた。そして、自分の国の中でもこんなに素敵な場所がある、それを大事にしないといけないなと思った。そしてまた、色々な景色を見に行きたい。