暑さ寒さも彼岸までと言うが、虚弱オタクはスパコミを過ぎると外を出歩けない。バグり散らかした気候変化を「令和ちゃん」と楽しんでいたのは遥か遠くの過去。更新しなくていい最高気温を更新し続ける世界に一度足を踏み出せば、虚弱オタクはさながら、アスファルトに出てきたミミズのように焼かれ、干からび、死にます。
4月25日よりはじまった「エリック・カール展」にようやく行ってきた。本日5月29日のことである。
開催を心待ちにしていたのに、いざ会期に入った途端「初日はガチ勢が多いだろうから」「GWは家族連れで溢れるだろうから」「明日は最高気温30℃らしいし」「明日は最高気温16℃らしいし」……と誰に向かって並べるでもない言い訳を並べて1ヶ月経ってしまった。
会場は東京都現代美術館。MOTという略称がよく知られている、綺麗で洗練された都会の美術館だ。
清澄白河という最寄駅の名前すら美しすぎて気取ってるような感じさえある。
そして、最寄駅と言いつつ、清澄白河駅からは徒歩13分(わたしのGoogleマップ上では14分)かかるので、わたしは迷っていた。
最高気温30℃が珍しくなくなった5月の末に、14分も日向を歩けるのだろうかと。
わたしがまだ体力に余裕のあるオタクであった頃、徒歩20分くらいは余裕で歩いていただろう。しかしいまのわたしは在宅フリーランスで怠惰極まる生活を送り、そんじょそこらの幼児よりも弱く、そんじょそこらの老人よりも体力がない。
なので、わたしは「バス」という恐るべき公共交通機関を使うことにしたのだった。
バスという乗り物は、こわい。
前乗りか後乗りか? 前払いか後払いか? の疑問2つだけでも腰が重くなるのに、新貨幣は使えるかとか、逓増するならどのくらいだとか、田舎ではSuicaが使えない地域もあったりする。
昔々、わたしは長崎市内で暮らしていた。路面電車も使うが、基本的にはバス通勤である。
長崎市内を通る長崎バスにはスマートカードという独自規格のカードがあり、もちろんSuicaやPASMOと互換性があるわけがなかった。ICOCAも使えなかった。しかも磁気が大変に弱く、カードケースに入れると反応しない。チャージ方法は長崎バスの営業窓口へ行くか、バス乗車中に運転手にチャージしてもらう方法しかなかった。
※いまは長崎バスも路面電車もSuica使えるので安心して観光に来てください。
更に、誤ってちょっと路線番号の違う便に乗って見知らぬ土地に連れて行かれるのがなお怖い。
というのも、以前の長崎駅前のバスのりばは1つしかなく、その1つしかないのりばに、ありとあらゆる長崎駅前経由のバスが次々とやってくる。
1番のりばは⚫︎⚫︎方面、2番のりばは××方面……みたいなのは、ない。バスの電光掲示板に書かれた行き先だけでなく、経由地もよく見ないと、てんで違うところで降りるはめになる。
※いまは長崎駅前バスのりばは改善されています。安心して観光に来てください。
また、長崎は坂道の街なのでバスも車も多く、渋滞しやすい。そのくせ目当てのバスは35分に一本くらいしかなく、平気で20分遅れたりする。もしかしたらバスを見逃してしまったのかもしれない、いまくるか、まだこないか、と常にソワソワと待ち続けなければならない。
時間通りに来ないのでマイナーな路線でシビアな旅程は組めない。そういった調整の効かなさもこわい。
そう、わたしのバス恐怖症は、長崎市内で醸成されたと言って過言ではない。すべては長崎がわるい。
京都や熊本へ旅行に行ったときも、降りるまで「本当に合っているだろうか」と不安で仕方なかった。電車も快速とか別路線で変なとこに降りてしまうことはあるけど、まだリカバリーが効く。だからこそ、基本は電車移動かつ徒歩30分以内なら歩いて行こうという……マインドがセットされていた。
東京のバスは乗りやすい。基本的に一律料金が多いし、前乗りだし、Suicaでピッてするだけだし。オートチャージできるし。行き先別にのりばが分かれててくれるし。そもそも行き先や経由地が分かりやすいし。Googleマップの経路検索でもちゃんとバス停や路線番号や遅れを表示してくれるし。都会のバスは、ほとんど電車のようなものなのだ。
きょうとて、菊川駅(都営新宿線)で下車し、バスに揺られて3番目のバス停で降車。そこから徒歩1分だった。
すごい。たすかる。えらい。ありがとう。バス、恐るるに足りず。おかげさまで生きております。エリック・カール展も楽しかったです。
長崎バスへの呪詛と、その呪縛から逃れつつあるわたしの話でした。
うだうだ言わず4月中に行っとけばよかったじゃろという話。うん。それは、そう。
写真は今回いちばん良かった展示物。

あと、地下にはsoup stockが営業してる「100本のスプーン」で飲んだイカしてるクリームソーダ〜ごろさめを添えて〜
