2021年11月〜2023年11月の間に出した本の装丁まとめです。
『TRILL』2021年11月28日発行


B5/64P
印刷:栄光印刷(舞姫セット)
表紙用紙:バルキーボール23.5kg(灰)
本文用紙:栄光コミック
遊び紙:色上質紙90kg(あじさい)
加工:箔押し(黒)
印刷:プリントオン
帯用紙:コート紙135kg
人生初の同人誌となりました。それまではPhotoshop+古い板タブで絵を描いていたのですが、突然思い立ってiPadを購入したことが大きなきっかけのひとつだったかなと思います。いまだにクリスタの新機能を発見するたびに慄いています。
そもそも同人イベントというものにほとんど行ったことがなく、同人誌を作るにあたって何が必要なのかわからない状況だったのですが、とても頼りになる友人2人の協力によりなんとか完成した思い出の1冊です。

1番最初に書き出した装丁案です。黒でもなく白でもない、ぼんやりとした中間色がイメージとしてありました。自由に取り外しが出来る帯を巻くことで、「そこにあるけどないとされたもの」を表現したかったのだと思います。ちなみに会場で帯を巻く時間はないよと当時の自分に伝えてあげたいです。
本文印刷は栄光印刷さんに決めました。理由はシンプルで、使いたい表紙用紙のお取り扱いがあったことと、入稿の手順がとてもわかりやすかったことにあります。一度お電話で装丁に関するご質問をした時、とにかく入稿の手引きがわかりやすくて…とお伝えしたところ、担当者が頑張って作ってました!と明るく返してくださいました。本当にありがとうございます。
その際、栄光印刷さんは帯の印刷は行っていないとのことで、ブックカバーへの変更も考えましたが、ちょっとコンセプトとずれてしまうので、帯のみプリントオンさんにお願いすることにしました。手順は下記の通りです。
栄光印刷さんに製本を依頼する
↓
プリントオンさんに帯を制作いただく
↓
家でひたすらに本に帯を巻く
↓
イベント会場に郵送

帯の巻き付けまで一箇所の印刷所さんにお願いする手段もあったのですが、一冊一冊に触れて、最後まで自分の手が関わっていたいという気持ちがあり、上記の手順で進めることにしました。

双方の印刷所さんにお送りした完成見本図です。
この本が最初で最後の本になるだろうなという予感が常にあって(大きな間違い)、原稿を始めてから入稿するまでの日々が本当に名残惜しくて、脱稿した瞬間は達成感よりも寂しさがあったのを覚えています。
『torch』2022年5月5日発行


B5/158P
印刷:栄光印刷(舞姫セット)
デザイン:BREW様
表紙用紙:バルキーボール23.5kg(青)
本文用紙:栄光コミック
遊び紙:クラシコトレーシングーFS 52.0kg(白)
加工:デボス加工
表紙1・4:2色刷(スミ+白)
1冊目に詰め込みきれなかった話があり、それらを納めた本を作るために申し込みました。以降、これのループとなります。
印刷は前回と同じく栄光印刷さんにお願いしました。特殊紙に単色刷りが出来るセット内容になっています。
表紙用紙も前回と同じくバルキーボールを選びました。厚みと張りがありつつ、触った感触は柔らかい、大好きな紙のひとつです。調べたところ大和板紙さんという企業がつくられている紙だそうで、素敵なボール紙をたくさん揃えていらっしゃいました。


大和板紙さんの紙見本帳です。Uボードホワイトが気になっています。
1冊目と大きく違う点は、表紙のデザインをデザイナーさんにご依頼した点です。この時の私は下図を描いてお渡しするという発想がなく、ふんわりとしたイメージ+参考画像をお伝えした後に制作していただきました。すみません…
下記がデザイナーさんにお伝えした点です。
・イメージカラーでもあるバルキーボールの青色を活かしたい
・文字の配列が好きな画像をいくつか
・空押しやデボス加工をどこかに組み込みたい
実際に頂戴したデザインがこちらとなります。


あのざっくりとした依頼内容から、こんなにかっこいい表紙が?と愕然とすると共に、次の機会があれば絶対にきちんとしたラフをお渡ししなければと大反省しました。

円に辿り着かない線が心地よく走っていて、その隙間をかいくぐるように文字が配置されていて、それらと一線を画すようにイラストの淵にデボス加工が施されています。このデボス加工がイラストに奥行きを持たせていて、思わず覗き込みたくなるような仕掛けとなりました。
表紙イラストも3〜4枚描いたのですが、自分では決められず、デザイナーさんに選んでいただきました。
『STARCHILD』2022年12月18日発行


A5/76P
印刷:西村謄写堂
デザイン:Raymei Design様
表紙用紙:ハンマートーン
本文用紙:美弾紙ホワイト
加工:エンボスPPフォグ(取り寄せ)、空押し
表紙1・4:1色刷(スミ)
表2・3:1色刷(スミ)
デザイナーさんに依頼する楽しさやありがたさに取り憑かれており、スムーズなご依頼をするためにも、3冊目にしてようやく原稿スケジュールというものを立てるようになりました。
2022年7月上旬 ネームを練って大体のページ数を把握
↓
2022年7月下旬 ページ数からおおよその脱稿日を逆算して出席可能なイベントの候補をあげる
↓
2022年8月 上記スケジュールを元にデザイナーさんにデザイン依頼
↓
2022年9月 1度目の試し刷り依頼
↓
2022年10月中旬 初稿データを頂戴する
↓
2022年10月下旬 2度目の試し刷り依頼
↓
2022年11月中旬 入稿
デザイナーさんへのご依頼を含めて、おおよそ4ヶ月程の原稿期間となりました。個人的には、これくらい時間と余裕があるほうが本はつくりやすいかもしれません。

1番最初の装丁案です。シルバー調の光沢紙に、モチーフ以外の箇所を白抑えすることで、擬似的な全面箔押しをするつもりでした。

試し刷りの画像です。いろんな光沢紙に刷っていただき、どの紙が1番箔押しらしい効果が得られるか試しています。

そして頂戴した初稿がこちらなのですが、この初稿をお預かりした瞬間、白地に黒一色の単色刷りがしたい!とこれまで考えていた装丁案が覆されることとなりました。
上記の点を西村謄写堂さんにお伝えし、再度試し刷りをお願いしました。この3冊目には、今まで出した本になかった「光沢感」を何らかの形で付け加えられたらと考えており、最初はインク自体に光沢感を与えてみることにしました。

ちょっとわかりにくいのですが、銀の塗料を混ぜた黒インクで刷っていただいたものです。これも本当にかわいかったのですが、インクの効果だけだとどうしてもさりげない光沢感になりますねと話していたところ、西村謄写堂さんからいっそPP加工します?とご提案いただき、最終的にこちらの案に決定となりました。

エンボスPPフォグは、クリアPPとマットPPのちょうど中間くらいの光沢感があり、若干のざらつきがあるのが特徴です。凹凸のあるハンマートーンに、光沢とざらつきが重なると面白いんじゃないかなと思い試してみたのですが、しっとりとした質感のある、とても手触りのいい本になりました。
噂には聞いていたのですが、西村謄写堂さんがご用意されてる装丁が本当に幅広くて、常に圧倒され続けていました。度重なる試し刷りにもお付き合いいただき、エンボスPPもなんとか部数分お取り寄せいただき…イベント当日、西村謄写堂さんも参加されていたので御礼をお伝えしに行ったところ、「ハンマートーンにエンボスPPのちせさん!」と装丁の内容と一緒に呼んでいただけて嬉しかったです。
『MARCH』2023年3月17日発行


A5/60P
印刷:栄光印刷(舞姫セット)
デザイン:ヱレキテルワークス様
表紙用紙:ハーフエア 180kg ヘンプ(取り寄せ)
本文用紙:栄光コミック
遊び紙:アートドリープ さざれ 35.5kg 白
加工:空押し
1色刷 1色目:ブルーメタリック
春なので春の話を描きたくて、イベントに申し込みました。ヱレキテルワークス様は特殊加工もご提案されているということで、喜び勇んでご依頼させていただきました。

1番最初にお送りしたラフです。イメージカラーとして淡いピンクや生形色などがあったのですが、どこかで冬の名残も感じられるといいかも、といった内容でお伝えさせていただきました。

大体のイメージが固まった後にお送りした表紙イラストです。座ったバージョンも別で用意してました。ティンタジェルから出発する前くらいの、少し幼いアルトリアのイメージです。


実際に頂戴したデザインがこちらです。
表紙用紙にはハーフエアという紙を使用しています。すこしだけ繊維質で、厚みがあるのにこのやわらかさは一体…と衝撃を受けた紙です。

イラストはブルーメタリックというインクで一色刷りをしました。表紙用紙の色味が春らしさを語りつつ、インクの色味で冬の名残を表現するのはいかがでしょう?というご提案をいただき、なんて素晴らしいアイデア…と思い出す度に震えています。春の話ではありつつどこか寂しくて、自分の頭の中にあるぼんやりとしたイメージが一気に固まる感覚は得難いものだなと思います。
『DAYBRAKE,FIRSTLIGHT』2023年8月20日発行


A5/92P
印刷:ブロス(マスカットセット)
デザイン:ちくわデザイン様
表紙用紙:ジェントル 175kg ホワイトフェイス
本文用紙:ニューバルギー
表1・4:2色刷(スミ+オレンジ)
初めて夏のイベントに申し込みをしました。バトルアクション(仮)を描こうと意気込んでいたようです。夏なので!


最初にお送りしたラフです。
あとがきにも描いたのですが、原稿期間中は西部劇を繰り返し見ていた影響もあり、表紙も映画のポスターのようなイメージがありました。
印刷はブロスさんにお願いしました。フォロワーさんからブロスさんのお見積もりの画面はとてもわかりやすくて見やすいですよと教えていただいたのがきっかけです。実際にとても使いやすくて、装丁の内容やページ数が変動しやすい自分にとって嬉しい機能でした。箔の種類も多くて入稿後のデータチェックもとても細やかで、またお願いしたい印刷所さんのひとつです。


実際にお送りしたイラストデータと頂戴した初稿がこちらです。特殊紙に黒とオレンジの2色刷りというシンプルな装丁だったのですが、デザインの力でここまでかっこよく引き上げていただけるなんて…とずっと感動しておりました。
左下から伸びるラインが銃弾のようで、銃を持っているキャラクターに向かって伸びているところに痺れます。右端の遠近感を感じさせるフォントの配置も絶妙です。
表紙用紙はジェントルホワイトを使用しました。硬くて張りがありつつ、ざらざらした質感のある紙です。表面がつるっとした光沢紙のほうがオレンジ色は乗りやすいのですが、繊維質な紙の中でカラーイラスト向けの紙はありますかとお尋ねしたところ、こちらのジェントルホワイトをおすすめいただきました。

本文用紙はニューバルギーです。ジャンプなどの少年漫画の色味に近い本文用紙のイメージです。すこし青みがかった色をしてます。
人生で一度くらいバトルアクションを描いてみたいなと思ったんですが、原稿期間中はなんでそんなこと思っちゃったんだ…と机に突っ伏している時間がほとんどでした。いつかまたどこかで思い立つ可能性もあるので、その時に向けて修行するつもりです。
『THREE SCALE』2023年8月20日発行


A5/34P
印刷:ブロス(マスカットセット)
表紙用紙:エンボス梨地 135kg
本文用紙:モンテシオン
遊び紙:色上質紙 中厚口70kg(濃クリーム)
加工:箔押し(レインボー)
表1・4:2色刷(スミ+黄)
2冊目を出すつもりでイベントに申し込んでいました。夏なので…
前述の本からあぶれてしまった話を再編集して、2つの話が入った短編集としました。いろんな本の形式がありますが、テーマを設けた短編集という形がとても好きです。
久しぶりに表紙デザインに取り掛かったのですが、誰しも得意不得意はあるから…と己を慰め続ける日々となりました。

完成データです。「ものと道具」をテーマに、同じものを手に取ったとしても、それぞれの視点があり、三者三様の見方がある、という内容の本です。

視認性の低い文字を真ん中に配置してみたり、見る角度や光の当たり具合によって色を変えるレインボー箔を選んだのも、上記の意味を込めたものです。
木目に触れるような、ものや道具に触れた時の手触りみたいなものがほしくて、紙自体にざりざりとした質感を持つエンボス梨地を表紙用紙に選びました。
『Rhythm』2023年11月23日発行


A5/66P
印刷:栄光印刷(ノベルセット)
デザイン:ちくわデザイン様
表紙用紙:バルキーボール 23.5kg(白)
本文用紙:栄光コミック
装丁:ブックカバー(クラシコトレーシングーFS 116.0kg)
表1・4:1色刷(スミ)
栄光印刷さんのサイトを拝見していたところ、ノベルセットと銘打っていますが漫画でも使えますよ!という一文を見てブックカバーの装丁に踏み込みました。
1冊目では自分で本に帯を巻きつけましたが、こちらのセットは巻きつけまでセットになっている…信じられない気持ちです。
ブックカバーの用紙も豊富で悩んだのですが、透け感のあるトレペのブックカバーにしました。


最初にお送りしたラフです。物悲しさややるせなさをキーワードとしてあげつつ、『Rhythm』というタイトルを想起させるようなラインが走っているといいなと考えておりました。ブックカバーのデザインという一手間二手間必要な作業を引き受けてくださったデザイナーさんには頭が上がりません。



表紙イラスト→ブックカバーデザイン→完成見本図です。キャラクターの間をすり抜けるラインの、この絶妙な軽やかさに唸り続けています。言うまでもなく自分では絶対に辿り着けなかったイメージがイラストと噛み合っていて、見返すたびに感動しています。


透け感もトレペの硬さもちょうどよくて、青の発色もとても綺麗なブックカバーとなりました。
ブックカバーの予備を頂戴したので、そっと卓上に置いていたところ、たくさんの方がお持ち帰りくださりとても嬉しかった記憶があります。ありがとうございました。
『土の寸法』2023年11月23日発行


A5/16P
印刷:ブロス(マスカットセット)
表紙用紙:モダンクラフト155kg
本文用紙:モンテシオン
表1・4:2色刷(スミ+蛍光オレンジ)
1冊目を脱稿した後、イベントまで1ヶ月あったのであともう一冊いけるかも!と4日で作った本です。表紙は2時間で描きあげ、タイトルは30分で決めました。結論ですが、もう二度と出来ないと思います。

完成データです。「土」というワードが飛び交う話だったので、表紙用紙はかさっとした質感のクラフト紙を選びました。そこにはっきりとした印象の蛍光オレンジを付け加えたら、まあなんとかなるんじゃないでしょうか…と勢いのまま入稿しました。身も蓋もなさすぎる。
クラフト紙の茶色に同系色の蛍光オレンジが負けてしまう可能性もあったのですが、想像よりもずっと綺麗に印字されていてよかったです。
多色刷りをする時の版分け作業が個人的に大好きなのですが、これも余裕がないとやっちゃいけない作業だなと反省しました。
まとめとこれから

これまで作ってきた本を見返したところ、全体的に白や青みがかったイメージが強いなと初めて気づきました。ぼんやりとした中間色が好きなんだと思います。

次に個人誌を出すとしたら、はっきりとした緑の紙に、オレンジや赤のマットな箔押しがされた表紙の本を出してみたいなとぼんやり考えています。



こちらは最近頂いたGAクラフトボードの立派すぎる紙見本です。頂戴したからには、必ず生かしてみせますから…と念押ししながら頂きました。すごく綺麗な紙です。
また来年の年の瀬に、こうやって書き留められることが増えていたらいいなと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。良いお年をお迎えください!
追記
※本ページに記載した内容は2023年12月段階のものとなります。各印刷所様のセット内容が変更されていたり、個人のご依頼を承られていないデザイナー様もいらっしゃる為、恐れ入りますがご了承の程よろしくお願い致します。
ちせ