2024年4月26日(金)NHKホール。ダメ元で絶対に当たらないと固く信じていたチケットがまさかの当選。昨年末から続く、ちいかわ並のくじ運の強さを使わせてもらった。
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近年あることがきっかけで、小沢健二の活動をくまなく追うことから離れていた。新しい活動への関心や深掘りなどは熱心なファンのみなさんにお任せし、自分は90年代の作品(オザケンと呼ばれた頃)とその記憶、そしてそれらに関連したイベントだけを、レトロスペクティブに消費していこうと決めた。今回のライブは、たまたまその条件に当てはまるものだった。
このライブレポートは公演のあった週末にはほぼ書き上げ、すぐに公開するつもりでいた。しかし、この日のライブが直後のツアー(モノクロマティック)と共通する要素を持っているらしいことを知り(最近のオザケン事情に疎いため)、ツアー終了後の公開とした。
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さて、NHKホールに到着し少し早めに席に向かうと、座席一面に来場者特典の白いTシャツが、花壇のようにびっしりと敷き詰められていた。本日の観客はこれを着て観覧することが推奨されている。XXL(いま大好きな韓国のヒップホップガールズユニットYOUNG POSSEの曲名と同じ)のサイズ感が男女問わずみんなにフィットしていて、今度自分のグッズTを作るならこのサイズだと思った。
ライブは着席からスタートし、起立→着席→また起立と、大半を占める昭和世代のお客さんに最大限に配慮されていた。クイズ:この日のMCで、小沢健二は何回「昭和」という単語を口にしたでしょうか? sokakkoii以降の曲も、バックバンドのメロウな演奏の中で違和感なく混在している。とくにツアーで演奏され、歌詞も配布しているという「台所は毎日の巡礼」がとても良く、自分が最近考えていることにも合致していた。いまは居眠りしている自分のクリエイティブマインドが、小沢健二の楽曲や表現によって隅々まで揺さぶられるのを感じた。
スチャダラパーが登場して2曲披露し、当時のブギー・バックのデモテープが流れたのに続いて、本日の主役「今夜はブギー・バック」が演奏された。追憶はそれぞれの心の中にあるものなので、ここでは何も付け加えることはない。ぼくの思い出は、以下に記してある。
その後もスチャダラの楽しいライブの時間が続いた。途中から小沢健二もギターのバッキングで加わり、いよいよ終盤。「フクロウの声が聴こえる」(この日のオープニング曲)の間にインタールードとして歌われた「強い気持ち・強い愛」。観客も歌うことを求められたラストの「長い階段をのぼり〜」のフレーズが自分(と小沢健二)の長い人生と重なって、感極まるものがあった。以下に引用させてもらう。
長い階段をのぼり 生きる日々が続く
大きく深い川 君と僕は渡る
涙がこぼれては ずっと頬を伝う
冷たく強い風 君と僕は笑う
今のこの気持ちほんとだよね
——強い気持ち・強い愛(小沢健二)
「強い気持ち・強い愛」の徹底的に「今のこの気持ち」をライトアップするような歌詞の中に、こんなに遠い未来の人生を見透かす力が隠されていたことにこの日初めて気付かされた(気付くのが遅かったともいえる)。
最後にもうひとつのテーマ曲である「ぶぎ・ばく・べいびー」が、スチャダラ+小沢健二、小沢健二のアコースティックソロ、そして"子どもたち"とのコラボという3つの形態で歌われて、長いコンサートは終了し、われわれ観客は三々五々散り散りになりながら、それぞれの日常に帰った。
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もうこれで小沢健二のライブに行くのも最後かと思ったら、『LIFE』の再現ライブが日本武道館で行われることがコンサート内で発表された。「1995年5月の日本武道館」=VILLAGEは、ぼくにとって小沢健二のスタート地点である。ちいかわ並のくじ運が再び発揮されることを願って、とりあえず申し込みだけしておいた。
おどりかえして、の「お」、おざわ、の「お」