今日の晩御飯はカレーだ。昨日スーパーで買った豚バラ肉のブロックを使って、お肉ゴロゴロカレーを仕込むのだ。
豚バラブロックは昨日スーパーで買ってきたものだ。元々買う予定はなく、ふとスーパーに並んでいるお肉たちを見ていて、カレー用にと手に取った。家の冷凍庫には先日買った、冷凍の業務用豚こま切れ肉があったのを覚えていたけど、この前よせ鍋として食べたらなんだか黒ずんでいてイマイチだったのだ。用途が鍋向きではなかったのかもしれない。
いつもなら「カレーに豚肉ならどんな部位でもおいしかろう」と気にせず使うのだけど、今回は気が進まない。一度そういうイマイチな体験をしてしまうと、次に使おうとしてもあんまり良い想像が出来ない。せっかくカレーを作るなら、あまりおいしくない体験をしたお肉を使うより、おいしそうなお肉で作りたい。おいしそうなお肉。ああそうだ、久しぶりに豚バラブロック肉にしよう。そう思って買ったのだ。
うちで作るカレーのお肉は、鶏もも肉やささみ、豚肉など、日によってバラバラだ。ヘルシーにしたい時はささみを使うし、最近は鶏もも肉や豚肉を入れることも多い。
豚肉はいつも似たようなサイズのパックを買っている。部位はよくわかっていない。バラだったか、ロースだったか、ももだったか、それともこま切れだったか。そもそもこま切れってなんだ?ロースやバラ、ときて、急に名称が『形状』になっている。特定の部位のものを買うというよりは、いつもの売り場に置いてある、100g100円ちょっとの大きめのパックを買っているという感覚だ。
家の冷凍庫にある業務用のこま切れ肉は、そういう、普段部位も分からず買っているお肉の代用になりそうだと思って買ったものだ。
だから、その業務用肉自体を『今回のカレーには使わない』と決めたところで、元々代用する予定だったスライス肉やこま切れ肉を改めて買うのは気がはばかられる。それで、いつもはカロリーの面で選択肢から省かれがちな、豚バラブロックの名前が出てきたのだった。
早朝の仕事がひと段落したであろう夫がキッチンへやってくる。仕事の合間のコーヒーを淹れにきたようだ。
我が家では、冷蔵庫の前面に、今週の献立をメモしておくためのホワイトボードを貼り付けている。「月」「火」「水」「木」「金」と縦向きに並んだ右側に、曜日ごとの献立を書き込み、パッと見て今日は何を作るのか、何か解凍しておく材料があるかを分かりやすくしているのだ。
ホワイトボードの今日の曜日に「カレー」と書いてあるのを見かけた私は(これは伝えておかねば)と夫へ声を掛けた。
「今日の夜はカレーね。久しぶりに豚バラブロック買ってみたん。テンション上がるやつ。ゴロゴロ肉のやつ」と私が言うと、「テンションが上がらんカレーって何?」と夫。私は「ささみやな」と即答する。
以前ダイエットに熱をあげていた事がある。その頃ほどではないにしろ、最近もたまにささみを食べている。皮のついていないささみをぶつ切りにして、ジップのついた保存袋にぼたぼたと入れる。お酒としょうゆを目分量でいれて揉んだあと、片栗粉も目分量にバサッと入れる。まんべんなくもみ込んだら、料理に使うなり、冷凍しておくなりする。何かで見かけてからずっとお世話になっている下処理法だ。こうすることで、ささみがパサつかず、やわらかく食べることができる。
以前は同様の下処理をしたささみをカレーにも使っていたけど、最近は使っていない。寄せ鍋や炒め物などの料理だと「別にささみでもいいか、ヘルシーだし」という気分になったりもするし、柚子胡椒やもやし、ポン酢などと合わせてさっぱりといただくときはその淡白さが逆においしかったりする。
でもカレーとなると、自分の中でお肉の重要度がぐっと上がる。カレーのお肉はおいしいお肉がいい。おいしさに妥協したカレーは食べたくない。といっても作るのは何の変哲もない、ルーの裏側に書いてある通りに作った普通のカレーなのだけれど。
カレーという料理のメインはお肉。これが万人に共通した認識なのかは分からないが、少なくとも私は、カレーの中のお肉をかなり重要視しているようだ。玉ねぎやにんじん、じゃがいもも、もちろん必要なメンツではあるのだけれど、お肉の重要度はほかに比べて段違いなのだ。平民と王様。さながらお肉様なのである。
カレーにはやっぱり脂身の多いお肉が合うし、好きなのだ。「テンションが上がらないカレー」と聞かれて、「ささみ」と即答した私は、内心健康に気を遣わなければいけないと思いつつも、やっぱり脂が好きなのだ。
「やっぱり脂が好きなんやなあ」としみじみつぶやく。