幾つ前の春の話だっけ

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私のとっても大好きなお兄さんに、過去言われたことがあった。その日私とお兄さんは夜中に飲んで酔っ払って早朝の住宅地を散歩していた。

「右と左と真っ直ぐと、どっちに行きたい?」

と聞かれて、関東の住宅地なんて何一つ理解がない私は、

「右も左も分からないもん」

と言ったのだ。するとお兄さんはとても楽しそうに私にこう言った。

「朱は何処にでも行けるんだよ。右も左も真っ直ぐも、好きな道を好きなだけ歩けばいい」

酔っ払った頭にすごく鮮明に残った記憶だった。当時の私はきっと今より未来が不明瞭でぼんやり日々を生きてたように思う。そんな時にお兄さんがどんな気持ちで言ったのか分からないけれど、その一言が私にとって魔法の言葉になっている。私は何処にでも行ける。何処にでも行っていい。

そういえばここ近年はふとした瞬間に消えそうとか言われなくなった。どんな存在だったんだよ、と思うけどそこまで心配をかけてたんだろうね。申し訳ない、図太く生きてる。しかも結構図々しく生きてる。だから、大丈夫だよ。まだ、元気だよ!とは言いきれないけど、元気な日も出来てきたよ。