今日読んだ本。
身体が金塊に変化していく奇病の恋人がいたとして、死んだら全身金になって3億円の価値になるとして、相続してくれと頼まれたとして。
-「お前は自分が同じ重さの金塊より価値のある人間だと思うか?」突然投げかけられた質問に、僕は再度凍り付く。最後に量った時は確か六十キロくらいだったはずだ。六十キロの金がどのくらいの値がつくのか分からないけれど、これだけは言える。 僕は六十キロの金塊よりはずっと価値の無い人間だ。黙り込む僕に対し、遊川はせせら笑うように言う。 「価値があるんだと思えないなら地獄みたいな話だ。生きている自分よりも死んだ方がマシだと明確に突き付けられる。周りの人間だって証明し続けなくちゃならない」 「証明?」 「自分は金の為に隣にいるんじゃないってことを」-
わたしはとてもお金をかけて育てられたけれど、両親にとって出来上がったわたしは失敗作だった。あんなにお金をかけたのに、と今でも顔を合わせる度に言われる。わたしに価値は無い。だけど、あなたはきっとわたしと引き換えに3億を欲しいと思わないだろう。あなたはわたしに恋をしているわけでも、愛しているわけでもないけれど、それでも欲しがらないと思う。そう思えること自体が、もうそのままあなたに出会えた意味だと、そう強く思った。