Surviving the Aftermathという破綻したゲーム

conf
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Epic Storeで無償配布されていたから、というだけの理由で少し触ってみたらトンデモない内容だったので簡単にまとめておく。

パブリッシャーはParadox Interactiveではあるけれど、開発は別。なのでいわゆるパラドゲーではない。

ゲームエンジンはUnityで、目立ったバグはないがゲームが進むにつれて激重になる。

大まかな内容としては近未来ポストアポカリプスな世界観にしたBanishedで、FrostpunkやRimworldのような要素が散りばめられている、というと聞こえはいいが、売れたゲームからつまみ食いしてるだけでオリジナリティは感じられなかった。

しかし、Banishedや他の先行作品と比べて大きな違いが1つある。それは、『最高難易度に設定しても普通にプレイしていたらゲームオーバーにならない』という点だ。このゲームの通常プレイでの敗北条件は住民(Colonist)の全滅で、勝利条件は避難施設(Bunker)の完成であるけれど、前者はどうやっても達成不可能であり、後者はどうやっても一定時間経過後に達成できる。つまりプレイングに意味がない。

敗北条件が達成不可能なのはSteamのストアページからすると想像し難いかもしれない。しかし、実際のところ、普通にプレイしていて達成するのはほぼ不可能なのだ。住民がゼロになれば敗北だが、数日おきに新しく難民(Survivor)達がコロニーの門を叩く。そいつらを受け入れ続ければ災害やリソース管理ミスで死ぬ分を容易に上回るので全滅しようがない。

ついでに、コロニーの経済出力は利用している鉱床の数に依存していて、色々頑張って人口を維持してコロニーを繁栄させるのは特に意味がなかったりする。

勝利条件においても、このゲームは虚無を抱えている。このゲームの経済システムは住民(Colonist)の経済と専門家(Specialist)の経済に分かれている。住民はコロニーのマップ上を歩き回って物資を集め、加工し、消費し、そして災害や病気で死ぬ。専門家はコロニーの外の広域マップ上を歩き回って物資や貨幣を収集しコロニーに供給する。専門家を雇うのには貨幣が必要だが、それは専門家の活動によって生成され、専門家の維持費は存在しない。要は専門家の経済は住民の経済に貢献するが、住民の経済は専門家の経済に貢献しない。そしてこのゲームの勝利条件は専門家の活動が全てである。コロニー運営は勝利条件とほとんど関係がないのだ。

色々悩んで施設を配置し、リソースの配分を調整し、住民のニーズに応えても、それは全くゲームの勝利条件と関係がない。むしろ人口が増えるとゲームの進行が遅くなるので、プレイングとしては人口をほどほどに抑えるのが有利。住民を追放するコマンドはないので、難民は基本的に全部受け入れておまけでもらえる物資や専門家をゲットし、一方で災害対策は手抜きして災害で住民を"間引く"のが合理的な戦略になっている。人命軽視も甚だしいが、それ以上にコロニー運営シミュとしてダメだろう。

なんでこんなトンデモなものが出てしまったのか、ハンロンの剃刀を振るう前に少し考えると、災害システムに起因するバランス調整が元凶のような気がする。何時間も掛けて育てたコロニーが理不尽な災害で滅んでゲームオーバーというのは受け入れ難いと思った結果、すべてが茶番になってしまった。

死神にダイスを振らせてはいけない。