最後に向かって『ブギウギ』がすごい。スズ子と善一の痛々しいほどの共依存の関係が、闇深くも美しく描かれる。揺るがない決心と、心の中の柔らかな棘のある部分を言葉にする能力。急にどうした、と思うほどスズ子が成熟している。内では愛介を亡くして愛子を産んで母になり、外では有象無象に囲まれながら大スターへと駆け上がる中で、スズ子は確実に、しなやかな強さと脆さの共存するひとになっていた。いや、彼女はもっとはじめから成熟していたのだろうか。わたしは彼女の明るさや無邪気さを幼さと勘違いしていたのかもしれない。
甘泉堂の栗蒸しようかん、福栄堂のくずの笹、いづみ屋のちりめん山椒を買い込む。恋人から「おばあちゃんが喜ぶね」と返信。祇園と鴨川を歩いているときほど、京都に住んでいることに対する感激が立ちこめることはない。バイオリンや名前のわからない楽器の演奏を聴いて、あんなふうに自由であれたら、と思う。ほんの短い帰省だけれど、実家に帰る。