前置き
私のオタク人生の始まりは小5の冬に読んだあさのあつこ『No.6』なんですが、その先も”転換点”みたいな作品がいくつかあったわけですね。
そのうちの一冊が中2の夏休み、親の実家に帰省している間やることもなく百貨店のくまざわ書店に入り浸っているときに出会った牧野修『MOUSE』で、これにドハマリした私は地元に戻った後に書店で「ま」の棚をクロールし、同作者の最新刊『月世界小説』を見つけたわけです。

一言で内容を言い表すのが難しい作品なので要点だけ絞って紹介しますが、「物語ったものを具現化する能力が登場し、その使い手は『工業用魔術師』と呼ばれる」「タイトルの通り、月が重要なキーワードとなる」「たくさんの平行世界が出てきて、やがて収束する」「人間を愛することのすばらしさ、創作讃歌」という感じです。読後感が異様にいい小説なので皆さんも読んでください。一生小説書くからね(©斜線堂有紀)という気分にさせられる。
そこから10年、色々なコンテンツに触れつつも『月世界小説』のことは(もちろん他の牧野作品も)ずっと大好きだったんですが……。
何と今年の1月に『月世界小説』の荒唐無稽なあらすじがインターネットで大バズして重版する異例の事態に。早川編集部こういう動きが速いのはありがたいですよね。
その流れで色々あって、たまたま新星急報社さんの中の人も同じ小説を読んでいることが判明(中の人とは作業通話友達です。ありがて~ご縁)したので、これはもうやってもらうっきゃないと思ってオーダー会に参加することにした次第です。
新星急報社さんは文芸と服飾をテーマにアクセサリー製作を行っています。オーダー会についてはこちらを見てもらうのがわかりやすいかなと思います。
私はこれまでwebオーダー1回既製品のアクセサリー購入1回で、対面のオーダー会に参加するのは今回が初めてです。
オーダー会の流れ
まずは予約から。23日の20時半、一番最後の枠に申し込みました。翌日たまたま何もない日だったので、同時開催のスナックカワウソさんで終電まで飲ませてもらう覚悟の予約です。
当日。テーマにしてもらう本と、参考資料として使うかな~? と思いつつ同著者の他の本をかばんに突っ込んで家を出ます。
夜の四谷、人少なくておもしれ~と思いながらお店まで。店内はめちゃくちゃ本があってまずここでテンションが上がる。
少し早めに着いたので、前の人のオーダー会が終わるまで順番待ちをしている間にカワウソ祭さんに飲み物をお願いしました。どんなものが飲みたいか丁寧に聞いてくださって優しい。まずは一杯ということで(オーダー会はワンドリンク制です)クラフトジンをトニックウォーターで割ってもらいました。
そうこうしているうちに順番が来たので席に着きます。
まずは中の人(以下星さん)がオーダー会の説明をしてくださいます。流れ、料金説明、エクスキューズなど丁寧に説明してもらえるので安心!
その後、どんなものを作ってほしいか伝えます。今回私の方で用意していった要望はこんな感じ。
作るものはネックレス
どんな色の服にも合わせられるように、モノトーンやクリアパーツを使って作成してほしい
つけているうちに全体的に上がってきてしまうのが気になるので、やや長めで作成してほしい
作例で見たクリアパーツのカニカンがかわいかったので、使用してほしい
月世界小説の「愛」「創作讃歌」の部分に特に惚れこんでいるが、作中に出てくる特異な言語感覚の用語も大好き
要望に合わせて星さんがパーツを選び、目の前に並べてくれます。使うパーツを選んだ時点で価格も決まります。
そうしてできあがったものがこちら。


す、すごい……めちゃくちゃいい……。
以下覚えている限りでパーツの説明を書きます。
メインの太いチェーン
ボリューム感を出しつつ、作中世界のいびつさやSFの重厚さを表現するイメージ。
シュリンクパールのパーツ
表面に質感が出ている。キーワードでもある「月」のイメージ。
細い2本のチェーン
世界線が分かれているイメージ。
カットの入った透明な石のパーツ
いくつにも分かれた並行世界が収束していくイメージ。
いやこの太いチェーン、めちゃくちゃ「工業用魔術師(Industrial Magician)」(月世界小説の作中用語)じゃないですか!? すっげ~……。
全体的に落ち着いた色味でまとまっているので合わせる服を選ばないし、大きなカニカンで着脱がしやすい上に太いチェーンの途中にカニカンを止めてY字ネックレスとして使うこともできるんです。実用性と浪漫を兼ね備えた構造でありがたすぎます。
パーツ選びの途中で「表紙に使われている青緑色をアクセントとしてどこかに取り入れてほしい」と思ったので、その要望を伝えるとビーズがわ~っと束になっているやつを出してきてくれてどの色が近いか一緒に探してくれました。最終的に青緑かつメタリックな加工がされているものを使ってもらって大満足です。色のビーズ、めちゃくちゃな種類があってウケちゃった。あなたの推し色もきっと見つかる!
だいたい形ができて長さの調整なども済んで、これで完成かな?と思った頃に星さんが一言。
「ここ、チェーンのつなぎ目からワイヤーが取れてしまう可能性があるので丸カンを加えて落ちないようにしておきますね~」
いいんですか!?
「普通の丸カンでもいいけど……これとか表面がざらざらしていていいんじゃないかな、『月の砂漠』のイメージで」
本当にいいんですか!?
入れてもらいました。
この青丸のところのパーツです。

なんてアクセサリー作りに真摯な方なんだ……というところでも感激しましたし、最後まで解釈たっぷりですごい。贅沢な時間を過ごさせてもらいました! いや~楽しかった。ハマりますねこれ。
アクセサリーを作ってもらった後は同時開催のスナックカワウソさんにて「白ワイン酵母で醸した純米吟醸」なる日本酒を飲ませてもらい、あまりの飲みやすさとうまさにバグるなどしていました。おつまみの浜納豆がめちゃくちゃ合ってすごかった。普段聞かないような曲を掛けてもらって、SFトークで盛り上がれたのも楽しかったです!
おわりに
いや~オーダー会すごかったな……星さんの概念を抽出してアクセサリーパーツに置き換えていく力、知ってはいたんですが目の前で見ると改めて驚愕します。「こう解釈してそのパーツが来るの!?」の流れ、マジで悲鳴が出る。
「自分しか(あるいは自分を含む少人数しか)萌えていないものがある」人は本当に楽しい体験ができると思います。もちろんみんなで激萌えの人も。カップリングのイメージアクセサリーなんかも作ってもらえます。ドシドシオーダー会に行きましょう。
ただし星さんへのリスペクトは忘れずに! 作れないもの・作りにくいものについてや注意事項などの説明がWebに上がっているので事前にお読みください。
今回お世話になった新星急報社さんのHPはこちら。
Xやインスタのアカウントもあります。アクセサリーを見ているだけでも楽しい上、普段製作されているものは「さみしいなにかをかく」という診断メーカー(これも星さん作)から着想されていて詩とアクセサリーがセットになっているので詩も見られます。ほぼ毎日更新なさっていてすごいのでおすすめです。