春の旅 (長良酒造・音楽イベント)

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春に、旅をしました。

目的は、長良酒造さんの、限定ジントニックと、チャリティ音楽イベントです。新幹線で名古屋駅に行き、駅近くの名鉄商店へ行きます。

ラベルに、桜が咲いています。使われているのは、「高桑星桜」(たかくわほしざくら)という日本に原木が一本しかない、貴重な山桜の特異種の葉です。さて、どんな桜なのでしょうか? お酒を買って、再び電車に揺られる事20分。岐阜駅に着きました。

コインロッカーに荷物を入れ、駅前の自転車をレンタルします。電動自転車は一日借りて千円です。

春の岐阜は、思っていたよりも暖かい場所でした。自転車を漕いでいると、爽やかな風を感じて気分が晴れやかになってきます。

岐阜には、たくさんの花が咲いています。川では水鳥が遊び、川岸を菜の花が黄色く彩っています。町では、染井吉野(ソメイヨシノ)の開花が始まっており、遠くの山にも、桜が霞んで見えます。椿や水仙、スズランやスミレが賑やかに咲き、白や黄色の蝶々が飛びまわり、美しい春の光景が広がっています。

さて着きました。「高桑星桜」(たかくわほしざくら)です。日本に一本しかない原木で、山桜の特異種となります。

4月の上旬に咲く桜という事で、今日は、まだ早かったようです。しかし、運良く、少しだけ咲いているのを見ることができました。

一重の凛とした白色の桜です。花弁は先が尖った星形をしており、ホシザクラの名前の由来になっています。緑の葉と共に咲き、対比が美しいです。花が咲く期間は2週間と、長く愉しめます。「高桑桜保存会」では、原木を大切に保護しながら挿し木で16本まで増やし、堤防の両側で育てています。

堤防では、他にも様々な桜が咲いていました。染井吉野桜、山桜は見頃を迎え、他にも高桑目覚桜、明月桜、ウコン桜、などなど30種類もの桜が植えられています。長い期間、お花見を楽しめる場所です。

桜を十分堪能した後は、岐阜市内に戻ります。お昼頃なので、岐阜市名物の「冷しタヌキそば」を食べに行きました。ゆでたてをキュッと冷やしたお蕎麦は、のど越しが最高です。揚げ玉のカリカリ食感も楽しい、ボリューム満点の美味しさでした。

それでは、ライブ会場の「伊奈波神社」(いなばじんじゃ)に向かいましょう。景行天皇14年(西暦84年)から歴史が始まる、1900年以上もの歴史がある神社です。元々は、岐阜公園内の丸山にあったそうですが、1539年に「斎藤道三」が稲葉山に稲葉山城を築城するにあたり、現在地に遷座されました。

参道には、見事な「しだれ桜」の並木が続いています。自転車を、神社の入口近くの自転車置き場に置き、坂道を登って行きました。境内もたくさんの桜が咲いていて、ちょうど見頃となっています。

会場は、本殿前の場所です。みんなで階段に座ります。最初に、長良酒造さんから今回のチャリティライブ開催の経緯について、お話がありました。長良酒造さんは、音楽家の坂本龍一先生の大ファンです。しかし、坂本先生は昨年の3月末にお亡くなりになりました。長良酒造さんは、とても悲しかったのですが、坂本先生の歌を歌う様々なアーティスト達の音楽を聞いている中で、今回来日されたMariana Melero(マリアナ・メレーロ)さんと言う、アルゼンチンの女性シンガーの方と知り合う事ができました。今年1月に発生した、能登半島地震を心配されたMarianaさんは、坂本先生の一周忌に合わせて来日され、今回のチャリティライブが開催される事となりました。

夕暮れの伊奈波神社の境内に、桜の花びらが舞っています。Marianaさんの優しい歌声が響くライブは、幻想的な美しさでした。この会場は、「能登半島地震チャリティライブイベント」のために、長良酒造の創業時にお世話になった方を通じて、特別に伊奈波神社から許可をいただき、お借りする事ができたそうです。

音楽イベントでは、坂本龍一先生の曲だけでなく、「赤とんぼ」などの日本の童謡や、オリジナル曲、Marianaさんの故郷の音楽も披露されました。Marianaさんの日本への敬意や愛情が溢れるライブは、大変盛り上がり、観客も交えて歌う参加型の曲では、みんなが心を一つにする事ができました。

長良酒造さんのイベントは、長良酒造さんの作るお酒と同じように、地域の人達やボランティアに支えられ、一つ一つの課題を、丁寧に解決していった先に、美しく花開いた、手作りの温かさがあるイベントでした。

さて、旅行も終わり無事に帰宅できました。早速、お酒を飲んでみましょう。明るく可愛い桜色のお酒です。控えめな甘酸っぱさと、澄んだ後味がします。保存会の人たちから提供された、「高桑星桜」(たかくわほしざくら)の葉から丁寧に蒸留されたお酒が使われていて、桜餅のような、穏やかな落ち着く香りが素敵です。飲んでいると、高桑星桜の白い花が咲いているのが見えてきました。伊奈波神社の桜の花びらが舞う中に、Marianaさんの歌声が聞こえます。岐阜の人たちが一緒に歌う声が聞こえてきます。

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「ぼくにわ はじめと おわりが あるんだ

こおして ながいあいだ そらを みてる」

Ballet Mécanique 作曲:坂本龍一 作詞:矢野顕子より

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ふと気が付くと、私も鼻歌で歌っています。

春の旅が薫る、楽しいお酒です。

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注:人が写っている写真がありますが、撮影・投稿が許可されているものです。