晴れているのに雨が降るのがキツネの嫁入り。
晴れているのに雪が降るのをたぬきの嫁入りというらしい。
では月が明るい夜に雨が降ったらキツネの婿入りで雪が降ればたぬきの婿入りなのかと思えばそうではないらしい。というより月夜に雨が降るという状況にあったことがない。
先日、月が明るい夜に遠くから雷の音がして、あれ?雨?と思ったら全然雨など降っておらず、その10分後くらいにはどんどん雷の音が近づき、稲光も見えるし音も聞こえるが雨が降っておらず、そのあと遅れて小雨がぱらついたかと思えばどんどん大雨になっていき、雷も激しくなり、雷様のオンステージやー(宝石箱風)と感動した夜があった。あれは何と表現したらいいのだろうか。
私の中ではたぬきの置き土産と命名してみた。
とある夜、月夜があまりに綺麗でたぬきが一匹、川辺で月を見ながら酒を飲んでいた。
「あぁ、静かで綺麗な夜にいい時間が過ごせて幸せだ。」
クイっと盃を開けたところで後ろの草むらがゴソゴソと揺れ、たぬきが顔をだす。
「やあ、いい夜ですね。」
「そう思いますよね、どうです?いっぱい飲みませんか?」
「それはいいですね。お隣よろしいですか。」
「もちろんもちろん、どうぞこちらに。」
後から来たたぬきは隣に座り月を見上げて目を細め、その後目を落とした先にある盃の中の月を見てからクイっと酒を一口で飲みました。
「やはり、いい夜ですね。」
そう言っているうちにまた草むらからたぬきが一匹。
「こんな所にいましたか。ここは月を見るにはいいところですよね。私もお邪魔しても良いですか?」
と言っているうちに3匹、4匹、ついには8匹も集まるたぬき達。そうなれば宴会です。
楽しい、愉快と騒いでいるうちに騒ぎが大きくなってきて、周りの森にも声が響き眠っている動物達が
「うるさいなぁ、もう少し静かに楽しんでおくれよ」
と苦言を呈したいがどうしたものかと悶々としていたらその思いが天に届いたのでしょうか、天気がいいのに雷が鳴り始めました。
「おや、天の神様もこの宴会に参加したいと声を上げたのでしょうかね」
「それはいいですね、神様にもいっぱいお酒を捧げましょう」
盃を天に向けてみんなが一斉に飲み干します。
神様に捧げるつもりでしたが、つい飲んでしまったのです。空から見ていた神様は自分のお酒がないとご機嫌斜めに。
雷は光を伴い、音を立てます。
「これは間違えた。失礼しました。こちらを是非お捧げします。」
そう言って天に捧げてから下ろしたら隣のたぬきが
「もういいだろ」
と手から盃を奪いぐいっと飲み干してしまいました。
「これは、これは、いい気分」
自分の腹太鼓を叩いて喜びます。
面白くないのは神様。目で楽しむ前に盃が空っぽになったのです。
神様は月を翳らせ雲を集めに集め、鬱蒼とした雰囲気を出しますが、酔って上機嫌になったたぬきたち気にも止めずに大声で歌い騒ぎます。
周りで寝ている動物達はうるさーいと声を上げてもその場は静かになりますが、すぐに元通りの大きい声に戻ります。
動物達も神様もこれではいけないと集めた雲から大雨を降らし、稲光と雷の音でたぬき達の歌声を止めさせます。
「うへぇ、雨だ」
「雷が落ちたら大変だ」
「逃げろ逃げろ」
たぬき達は這々の体で川辺から離れてそれぞれの住処に逃げ込みました。
たぬきが宴会を開いていた後には大きい雷の後にお酒の瓶が真っ二つ。大切なお酒も全部川の水と雨水と混ざってなくなっていました。
「あぁ、今度からお酒を飲む前に神様の分も用意しておかないといけないな」
瓶を片付けながら反省しつつ、また月の夜を待ち遠しく思うたぬきでした。
という想像をしてフフと笑う私。想像のたぬきの置き土産、皆さんにもお裾分けです。