川べりの歌

crepuscule
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或る者は木を集めて橋を作って渡って行った。

別の者は、石を積んで堰を建てて川を超えた。

また別の者は船を編んで川向うへと漕ぎ出した。

石橋を悉く叩き尽くし、それが時間とともに粉微塵に流れ去っていく様を満足気に見届けたのち、俺は川を渡らなかった。

危ないところだった。正解だと思った。

踵を返す先にはまだ道がある。この川を渡らずとも他に道は続くだろうと、本気でそう思っていた。

自分が川中に浮かぶ、小さな中洲の上に立っていると知ったのは、それからしばらくしての事だった。