美術館で会いましょう

cucco
·

時々美術館に行く。だいたいの場合は自分の好きな画家の作品を目当てに行くのだけれど、テーマが気になれば知らない作品ばかりでも行く。

芸術と言われてすぐに思いつくのは「絵画、音楽、文学」あたりが筆頭ではないかと思う。音楽はかなりダイレクトに人の感情に作用する。わかる。文学は文字での描写により情景が自分の中で浮かび、登場人物に自分を重ねることで感情を共有できる。わかる。では絵画はどうか。中学生ぐらいまで私は正直絵画の魅力がそれほどわかっていなかった。母親の趣味で家に数冊の印象派画集がありきれいな絵だな、好きだなぐらいのふわっとした認識でそれを見ていた。

ある時ふとしたきっかけでパウル・クレーの「ニーゼン山」という作品を見た。その瞬間「なんだこれは」という衝撃を受けた。その絵を見た時に生じたなんともいえない懐かしさ、もの悲しさにも似た切なさ、敬意のような感情。クレーが自身の故郷の山を描いたものであるという説明を読み、なるほどこの感情が郷愁か!!と私の目からウロコがぼろぼろ落ちた。

そしてさらに年月を経て、グスタフ・クリムトの作品展で再び衝撃を受ける。展示を見てあまりのエロさに思わず一瞬目を伏せた。直接的な描写があったわけではないのに作品から『ザ・官能』がだだ漏れで、重く甘い香りがあふれ出しているような感覚すらある。誰かの閨を覗き見てしまったような背徳感。エッッッッ。一枚の油絵でしかも直接的な描写無しで見る側をこんな気持ちにさせるのやばくない?これR指定なくていいの?ほんとに??と完全にKOされて会場を後にしたのをよく憶えている。

音楽は家でも聴ける、本はどこでも読める。でも美術品に関してはやっぱり美術館に行って実物を見たほうが良い。感情をダイレクトに殴られたいならなおさら。だから私は時々美術館に行く。美術館で会いましょう。

@cucco
詩人は中原中也と金子光晴。画家はクリムトとクレー。猫も犬もどっちも好き。音楽はノンジャンル。映画ならハッピーエンドは好みません。よく病みすぐ復活します。