平屋が好きだ。住んだことはない。今住んでいるところの近くに昔、平屋を使った雑貨屋があった。一棟全部が雑貨と服飾品で飾られていて、店主は優しくて、夢の中からでてきたような店だった。
庭には車が2,3台とめられるくらいの広いスペースがあって雑然と植物が植えられている。木で作った柵に囲まれた壁は白い漆喰で塗られていて瓦屋根が乗っている。玄関の木戸を開けると革でできたバブーシュが用意されているので履き替える。入ってすぐには古い外国の切手やレースでつくられたアクセサリーが並んでいて、左手には洋服、右手には作家物の陶器が並んでいる。全部なかなかのお値段のものだったから買えるものは少なかったけど、散歩中に立ち寄ってふらふら見るだけでも店主は優しく接してくれた。
今書いているとほんとうになんとも優雅だ。この店がなくなったあとあの平屋は一度なにかの教室になって、今はなにかのスタジオになっているみたいだ。いずれにせよもう私には関係のない建物になってしまった。
もうああいう店がこの辺にできることはないんだろうなと寂しく思う。引っ越してきた時はいくつがまだ個人経営の店があったが全部病院と学習塾と駐車場になってしまった。どこもかしこも駐車場だね。
生まれたところを離れて、育ったところを出て、今は自分の選んだ好きな街に住んでいる。住むところを自分で選べるのは幸福なことだ。でも街は変わってしまう。他にも住んでみたいところってある?海の近くに住んでみたいね、川もいいよね。湖って好きなんだよな。長野の大きな湖には一人で泳いでいるおじさんがいて、驚いたけどめちゃくちゃうらやましかった。山もいいけどさぁ、私の脚力で登れるかなぁ。考えるのはとても楽しい。でもできれば本当はここにずっと好きな街があってほしいんだよな。