向こう側の火事/階段に住む亡霊

第二
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雨が降り出すのを、止めることは出来ない。

眼前に立つちいさなこどもは夕立の前の空のような瞳をして、それでも強くこちらを睨んでいた。

泣けばいいと思った。

幼気なこどもらしく、ぼろぼろと涙を零して、周囲の同情を引いて、そうして憎んだらいいと思った。

光。雷鳴。

いや、空耳だ。

泣き出しそうだと思っていた瞳は、嵐の前の静けさと、焼け付きそうな烈しさを孕んでいる。

ブラウン管越しの映像

あなたは何故黙っているの?

「声を出すとぴかぴかに見つかってしまうから。」

ぴかぴかに見つかるとどうなるの?

「よくないことが起きる。」

よくないことって?

「わからないけど、すごくこわいことだと思う。」

それはこわいね。ぴかぴかに見つからないために、他にはどうしたらいいか知っている?

「石になればいいよ。何も見ず、何も聞かない。でも周りの音に耳を澄ませる。そうしたら、」

石になれる?

「石なんかきっと、ぴかぴかは興味がないからね。ぴかぴかが興味を示すのはじぶんで動いて音を出すものだけ。」

確かにね。ところで、今あなたは誰と話しているの?

「亡霊だよ。だって、先生がそう呼んだからね。」

@daini
だいにです。詩や日記や夢の話などを好きな時に好きなように書き散らかしては溜める場所です。 奉仕の心など微塵も無いのに奉仕活動を勧められる人の皮を着た化け物