雨が降り出すのを、止めることは出来ない。
眼前に立つちいさなこどもは夕立の前の空のような瞳をして、それでも強くこちらを睨んでいた。
泣けばいいと思った。
幼気なこどもらしく、ぼろぼろと涙を零して、周囲の同情を引いて、そうして憎んだらいいと思った。
光。雷鳴。
いや、空耳だ。
泣き出しそうだと思っていた瞳は、嵐の前の静けさと、焼け付きそうな烈しさを孕んでいる。
ブラウン管越しの映像
あなたは何故黙っているの?
「声を出すとぴかぴかに見つかってしまうから。」
ぴかぴかに見つかるとどうなるの?
「よくないことが起きる。」
よくないことって?
「わからないけど、すごくこわいことだと思う。」
それはこわいね。ぴかぴかに見つからないために、他にはどうしたらいいか知っている?
「石になればいいよ。何も見ず、何も聞かない。でも周りの音に耳を澄ませる。そうしたら、」
石になれる?
「石なんかきっと、ぴかぴかは興味がないからね。ぴかぴかが興味を示すのはじぶんで動いて音を出すものだけ。」
確かにね。ところで、今あなたは誰と話しているの?
「亡霊だよ。だって、先生がそう呼んだからね。」