この前ね、映画館行ったんですよ、映画館。
そしたらなんかスクリーンに人がめちゃめちゃいっぱい出てきて、チュウしただのしなかっただの言い争ってるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、キスが恋愛の極致であるみたいな価値観を内面化するんじゃねーよ、ボケが。
キスだよ、キス。捕食器を絡み合わせて喜んでんだよ。意味分かんないじゃん。もちろん恋人なんかいちばん親密な他人なことも多いから、2人だけの意味不明な行為があるのはいいよ。でも全カップルがその常識を共有するのはおかしくない?
想像してみよう。
たとえばこの俺に恋人が相談してくる。痩せるためにはどうすればいいだろう。もちろん俺はダイエットについてほとんど知識がないから、冗談か本気か自分でもわからないような言葉でその場を凌ぐことにするだろう。
そういえば、筋トレは普段から少しずつすることが肝要と聞いた。これから街で子供を見かける度に筋トレするのはどうだろうか?
恋人は顔をしかめてその場を離れる。俺は面白いと思った冗談がつまらなかったことに自分でショックを受け、傷ついた表情を隠そうと無理に口角を上げてみたりする。
しかしどうやら恋人のなんらかの琴線には触れたらしく、恋人はそれからデート中に子供を見るとわざとらしく席から立ち、体を伸ばしながらこちらをちらりと見る。
さあ、こうして子供を見つける度に立ち上がったりにやにや笑って目配せしたりする異常な二人組が生まれた。
俺が乙女座であるばかりになんかロマンチックな話みたいになってしまったが、もともと書きたかったのは恋人間の意味不明な儀式の話だ。
上の例ではぎりぎり公序良俗に反してはいないが、ガキが絡むところがちょっと怪しい。
俺はもうウソを付くのには疲れたので(この俺に恋人はいないというのに、恋人がいる体で書くのは明らかな欺瞞だ!)みなさんは各々で違法な意味不明儀式を考えてみてほしい。(法秩序を好悪に単純化するな!!)
そういう儀式的要素を排除したキスというものもあるかもしれない。しかし、ならばなんのために?
快楽を求めてやってるならなおさらおかしい。確かにキスはうまくやれば多少のくすぐったい快楽を生むが、それではついばむような軽いキスの説明がつかない。
スクリーンに写っている意味不明な価値観を助長する邪悪な映画はまさにそういうフレンチキスについて言及しつづけていて、一緒に見に行った親戚の女児が目を輝かせてそれを見ている。俺はこの女児のために冒頭の激情を抱いたような気がするのだが、もうわけわかんなくなっちゃったからいいや。
ところで明らかにその目的でついていない粘膜同士を接触させると快楽が生まれるのはかなり不思議だ。眼球どうしでも気持ちいいのだろうか?
いや、口内は食物とふれあうために頑丈に作られている。眼球とは違う。
それなら、鼻は…………?
鼻中は口内ほどではないが頑丈にできているように思う。鼻粘膜を恋人と絡み合わせることはかなり難しそうだが、それ以外の粘膜と接触させたら気持ちいいのだろうか。快感のためのキスとおおよそ同じ行いだから、みなさんもぜひ恋人の鼻に舌でもチンポでも突っ込んでみれば(もしくは、突っ込まれてみれば)いいと思う。
がんばってな!