ルックバックを観た

ddd
·

引用: https://lookback-anime.com/novelty/© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

ネタバレにならないように数行は関係ないことを書く。

事前に餃子を食べて映画館に向かった。餃子はやっぱり皮が分厚くって、サイズが大きいものがいいなあ。

しっかし、ルックバック良かった。

人の手が作画に現れててよかった。真っ直ぐじゃない直線とか、線のかすれとか、それが破綻なく動いてる。贅沢な映像だと思った。

肉体の重さや軽さを感じてすごかった。紙片を取れずに空を切る細い腕、雪の重さにひっぱられる足の重さ……。数秒に込められた何人ものスタッフの手間を考えると、なんて豪華な1秒だろうという気になる。

やっぱり、雨の中、喜びを湛えた藤野が走るシーンは白眉だった。四肢の伸びが不自然で大袈裟で秩序だっていない様子、だからこそ最大限に歓喜を感じさせるその衝動……。本物らしさや自然さの表現に長けたアニメーターが、こんなへんてこりんで不自然な動きを、でもリアリティを持って描いている逆説的な超絶技巧。

漫画を読んでいたせい(=つまり結末を知っているせい)で前半でうるうるしてしまった。終わりを知らない登場人物がその瞬間瞬間を燃やしている時間の美しさを見てしまっていた。たぶんよくない見方なんだろうと思うけど。終わりを知っている鑑賞者が終わりある登場人物の輝きを見て感傷に浸る時間だった。よかった。

前半のシーンはただただきれい。すべてが光っていて上手くいっている。藤野と京本が過ごした小学校から中学校の記憶の温かいこと。

でも後半は、前半ほどグッとこなかった。それは漫画で展開を知っていたからかもしれない。

映像になってすごくよかったところ、逆に良さが落ちてしまったところもあると思う。

通夜の後で藤野が古い4コマを破いて、パラレルワールドの話が進むところはよかった。時間のスケールが狂って、ありえた世界線の京本と空手を続けている藤野が交わる瞬間、そしてその妄想から一気に寒くて暗い廊下に引き戻される瞬間。あそこは時間軸を作り手に左右されるのが心地よく、そこがとてもよかった。

アニメに対して、漫画は白黒で淡々と進む。しかし映像には作り手の設定した時間軸に鑑賞者が組み込まれ、劇伴で泣きどころがより鮮明になる。後半はそれが鮮明になって、「あれ、こんなに泣かせようとする話だったろうか」と少し立ち止まってしまった。派手な音響や音楽のせいでそう感じたのかもしれない。

漫画を読んだとき、ルックバックの後半はもっと淡々としたものだったように思った。

絵を描き、雪が降り、雑誌が刷られ、人は死ぬ。そんでもって次の日が来る。そういう淡白さ、寂しさ、それでもなんとか目の前のことをこなしていく感じ、それが漫画にはあった気がする。別に映画が悪かったというわけではなく、違いがあるなと思った。漫画も映画も良かった。

とにかく良い映画だった。みんなが幸せに生きていける世界があれば良いのになーと思った。

映画を見終わって、キービジュアルを見ると、本当にこの2人がこの日本のどこかに存在していて、漫画を描いていそうな気持ちになる。同じ世界に住んでいそうな不思議な気分になる。たった60分の映像でこんなことを思うとは。それだけの強度がある作品だった。

@ddd
音声入力を使いながら、ふと思い立ったことを書いてみます。