大学のときは本当にアホだったので（いまも変わらずアホではあるが）、家具のない空っぽのアパートに住んでいた。
当時、暇で出不精だったがためにインターネットや雑誌をちまちま読んでばかりいて、おしゃれな部屋への解像度と理想と欲求とが高くなっていた。しかしおしゃれな部屋に置かれている本物の家具は高い。学生のお財布ではデザイナーズの名品は買えない。しかし安物の家具で済ませたくないという、しょうもなプライド（しょうプラ）だけは持っていた。
ふつうは一念発起してバイトを始め、憧れの家具を買うと言うシナリオがあるだろうが、こちとら人付き合い×、新しいコミュニティー×、出不精◎というステータスだからなんの行動も起こせない。結果としてお金はたまらず、空っぽのアパートは空っぽのアパートのままだった。
そして、予算がなく、王道や正攻法をとれない人間がたどるのはいつだって逃げの変化球。学生の自分はわけのわからないこじらせ方をしていて、りんごが入っていた木箱を農家から買おうとしていた。横に倒して積み上げれば棚になる。りんご木箱の本棚。みなさんはりんごの木箱をクラッシュバンディクー以外で見たことがありますか？絶対に無印だかニトリだかで普通の棚を買った方がいいのだが当時は狂っていた。部屋の寸法を測り、A4のコピー用紙にスケッチを描き、木箱を置いたときのシミュレーションをしていた。そして輪をかけて最悪なのは、けっきょく日和って木箱を買わなかったことだ。そういうことをやって失敗すべきだったのに。
てなことを唐突に思い出した。