また派手に

倉田タカシ
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 あの、ほら、フィクションの定番のセリフでなにを言ってみたいか、という話題がときどきツイッターで盛り上がるじゃないですか……(少なくとも速水螺旋人さんが何度か話題にしたのを記憶しています)

 自分は、「また派手にやったもんだな」というやつを言いたいらしい、とこないだ気づいて、もうすごく恥ずかしくなって……

 足元の、破壊されたなにかの残骸を靴の先でつっつきながら「また派手にやったもんだな」とか

 うわあ……

 ドアを吹き飛ばされた戸口に立ち、ほとんど残っていない枠からささくれた木片をつまみとりながら「また派手にやったもんだな」

 のぞきこんでいた双眼鏡をおろしながらわずかに顔をしかめて「また派手にやったもんだな」

 ディスプレイを見つめてキーボードをさみだれに叩きながら、オフィスをおとずれた相手にふりかえりもせず「また派手にやったもんだな」

 出来立てほやほやの巨大なクレーターの縁に立って、うんざりしたような顔で「また派手にやったもんだな」

 廃墟と化した悪の巨大要塞の前で毛づくろいする巨大な獣とその飼い主を呆れ顔でながめて「また派手にやったもんだな」(呆れ顔は本当に恥ずかしい……助けて……)

 恥ずかしい……! でもまだ微妙に言いたいような気持がある……! しかしこれを書いたことによって呪いをはらうことができるのではないかと期待しています。