「メニューのこの、『どっさり』というのは……」
「『どぎつい』と『あっさり』のちょうど中間のスープです」
「あ、量じゃないんですね」
「量はどの味でもどっさりです」
「じゃあやめときます」
「そういう冗談をおっしゃると、店の隅にいるあの獣が噛みますよ。甘噛みのつもりでくるけれど、あなたがワンピースでいられることは保証できません」
「もう自分がそういった獣を見られる年齢ではないことに一抹の寂しさをおぼえます」
「そういった寂しさもまた人生の調味料というものでございましょう」
「どっさり、麺かためでお願いします」