Her Story

倉田タカシ
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The Flying Lizards - Her Story (youtube)

 最初に音楽でフェミニズムを意識したのがこの曲でした。20代になったばかりのころか、すでに概念としてはある程度知っていて(なにを介してかは覚えていないのだけれど)、歌詞を読めばこれが一種のフェミニズムソングであることは明らかなのに日本版の歌詞対訳がそこをぜんぜんわかっていなくて大いに不満をおぼえた、という記憶があります。中盤で男性が「This is a love song / This is a love song」と繰り返すのは、そのまえで同じ声が「I own you / You don't own me / You are my territory」と言ってるのを指してであるから、「これはラブソングである/これはラブソングである」と男性権力によるムカつく宣言として訳すのが妥当であろうところ、「これもひとつの愛のかたち」なんていうキモい訳になっており、などなど(日本版の訳詞に期待してはいけないのが常識であることは云々(でも最近は昔よりちゃんとしているような印象があります))

 基本的には女性による男性社会への呪詛の歌だと思うのですが、訳詞ぜんたいが女性の側がちょっとフフンと鼻で笑うような余裕をみせるトーンになっていて、それも解釈違いであるなあと思ったものでした。

 あと、ネットで歌詞を検索するとだいたいどれでも「History, history, hypocrisy」となっているところ、これは音声認識の誤りで、正しくは「History, *her* story, hypocrisy」なんで、ここはタイトルにもなっている大事なとこなんで、インターネットのそういうところがもっとよくならないかしらと思います(ユーザーが訂正できる歌詞サービスもあるかもしれませんが)