はんにゃ先生

倉田タカシ
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公開:2024/6/14

「埴谷(はにや)先生なんですよ」

「あー、はいはい」

「あだ名がはんにゃ先生」

「かわいいっていうか、こわいっていうか」

「やさしい先生ですよ。で、ほかに、ハンナ先生がいるんですよ。つづりがH-A-N-N-A」

「はい」

「で、このハンナ先生も、いろいろな変遷のすえにあだ名が『はんにゃ先生』になって」

「えー」

「あだ名の収斂進化ですね」

「収斂進化?? ……それ、困らないんですか」

「職場の人たちはちゃんと区別できるみたいなんですよ。なにか、微妙な発音の違いでもあるのか……部外者にはぜんぜんわからないんですけど」

「へえ……」

「で、こないだ、新人で入屋(はいりや)先生という人が入ってきて、その人もあだ名が『はんにゃ先生』で定着しそうなんですよ」

「ええっ……」

「それもちゃんと区別できてるみたいで、職場では」

「あだ名としてちょっと遠いし、なにか、般若の呪いみたいなのがその職場にあるんじゃないですか……」

「そんなオカルトみたいな(笑)」

「なにか般若に関係したものがあったりしないですか」

「とくにないと思いますけど……あ、まあ、講堂の壁に大きな般若のお面がかけてあったりはしますけどね。高さ3メートルくらいの」

「こわい。こわすぎる」

「まあ、とくに関係ないんじゃないですかね。そんなオカルトみたいなことはないですよ」

「ここでこうして話しているだけで、般若の影響圏に捕らわれてしまっているのでは……」

「10キロくらい離れてるからたぶん大丈夫ですよ。いや、そもそもそんなオカルトみたいなことはないですしね」

「あそこって中学校でしたっけ。それとも小学校?」

「いやー……わかんないですね。学校だったかなあ……」

「もうほんと無理」