Xに載せたものをまとめてます
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彼氏に振られた。ここしばらく頑張って毎日をこなしてきたけれど、今日くらいは自分を労ってあげたい。そう思って溢れそうになる涙を堪えながら、行きつけの店で一人で飲んでいると、「おい」と声をかけられた。
静かで適度な距離感が保たれているのが好きな店なのに、ひどく物騒な声に思わずびくりと肩を震わせる。何か粗相をしただろうか。まだ大して酔ってもいないし、静かに飲んでいたつもりなんだけど。恐々声の持ち主の方を振り向くと、そこには-—
「なんで?!」
アメリカにいるはずの、rkwの姿があった。
「聞いた」
簡潔な答え。無表情な顔でこちらを見下ろしている。多分、元バスケ部の誰かに聞いたんだろう。先週高校時代の友人たちと飲んだばかりだ。そこではだいぶ荒れてしまった。多分、泣いたと思う。記憶は残ってないけど。
「じゃなくて、何でいるの?」
「一時帰国中」
そりゃそうだろう、目の前にいるんだから。その理由を聞いているのに、相変わらず会話がスムーズに成立しない。まさか怪我をしたから、とかーー!?
はっとrkwの顔を見上げた瞬間、
「代表の都合で帰ってきただけ」
「ああ……」
納得して、やっぱり日本代表に選ばれてるのか、凄いなあと思う。
ふとrkwの指が伸びてきて、私の頬に触れた。親指がぐいっと目の下を動いて、ああ自分は泣いていたのかと気づく。
でも突然rkwが現れた驚きで、涙自体はもう止まった気がする。
rkwは隣の席に座ると、何やらマスターに注文している。
「飲むんだ?」
「今回、試合で来てるわけじゃねえから」
プiロ選i手は大変だなあと思っていると、rkwは左手で頬杖をついてこちらを見てくる。
落ち着かないんですけど、と言うより早く、
「なんで?」と聞かれた。
それが、なんで別れたのか、という質問なのだと理解するのに少し時間がかかった。
「転勤するんだって。私、ついていっても良いと思ってたんだけどな…」
「へえ」
「遠距離になる覚悟もしてたのに。そんなもんだったのかっていうのが1番ショック」
「ふーん」
rkwの相槌は短くて、私の話に大して興味もないんだろうけど。
いったん口を開けば言葉が止まらなくなる。先週は、怒りばかりを口走っていたけれど、今はそれよりも悲しさの方が大きい。
「どうしてうまくいかなかったんだろ」
「それだけの男だったってことだろ」
「そんな言い方…」
「見る目がねーってことだろ」
「失礼な、」
「向こうの」
「え?」
「男の見る目がねぇってこと」
「……慰めてくれてる?」
「ん」
小さくrkwが頷いたのが引き金になったのか、涙が後から後から溢れてくる。
「泣いて、忘れろ」
もう今更取り繕ったって仕方ない。うん、と声にならない声で頷いた。伸びてきた大きな手のひらが、子どもをあやすように強めに頭を撫でてくれる。
「…うん。忘れて、また新しい恋を探す!」
そう言ってくいっとグラスの中身を飲み干すと、なぜかぎょっとした顔でrkwがこちらをみていた。
「なに」
「……別に」
rkwの声はため息混じりで。さっきまで少し優しい眼差しを向けてくれていたのに、今は完全にそっぽを向いてしまっている。
「なんでよー、慰めてくれるなら優しくしてよ—!」
「もう十分だろ」
「足りない!全然足りない!」
「うるせー」
「意地悪!」
負けじとこちらもフンっとそっぽを向いた。
「ぜってー落とす」
その後呟いたrkwの言葉は、その時の私には聞こえていなくて。
自分の覚悟をrkwに語ったことを後悔する羽目になるのはまた別の話ーー。
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rkwくんは綺麗めなロングのチェスターコートを着ているところを想像しています!!!