「ねえねえ、生まれ変わったら、何になりたい?」
「は……?」
隣の席の女子が突然そう聞いてきた。
予鈴が鳴って、もうすぐ5時間目の授業が始まるっていうタイミングで。
そろそろ眠ろうかと考えていたときに一体何を言い出すのだろうと、名前も思い出せないそのクラスメイトを見る。と、彼女はオレを越えた先ーー窓の外を見つめ「私は、鳥になりたいかなあ」と続けた。
どこか遠くを見る彼女に
「ニンゲン」
短くそう告げれば、「全然面白い答えじゃないねえ」と笑われた。
「ニンゲンじゃねーと、バスケができねえ」
「確かに、そうだね。私はね、パイロットになって空を飛びたい」
はっきりと言う彼女に、大して言ってることは変わらねーと思っていると、
「でもそれは難しいからさ、鳥なら飛べるじゃない?」
ぽつりと呟く声は消え入りそうだった。
「別に。なればパイロット」
そう言うと彼女の目線がオレを捉える。
一瞬きょとんとした表情を浮かべた彼女の口元が、柔らかく上がった。
「ふふっ。じゃあ私が将来、rkwくんをアメリカに連れていってあげよう」
そう言って笑う彼女の横顔は、思わずついていた頬杖を解いてしまうほど美しくーー
「……アンタの名前、なんだっけ」
気づけばそう問いかけていた。澄んだ瞳が、こちらをぽかんと見つめている。
「もう、rkwくん失礼!クラスメイトなんだからちゃんと覚えてといてよね!」
そう言って彼女が名乗った名前を、小さく口に乗せる。
自分にだけ聞こえる声で呟いたつもりだったのに、「いきなり下の名前で呼ばれたらびっくりするんですけど!?」と慌てふためく彼女の頬は真っ赤に染まっていて。だからこれからは、名前で呼ぼうと決めた。