教室に入ってきたrkwくんと、ばちんと音がするみたいに目が合ってしまった。決して私がーーそろそろrkwくん来るかなーーと思って教室の出入り口に目線を送っていたからでは、ない。
rkwくんは、ほんの少しだけ目を見開いて、それからさらに少しだけ、微笑むように眦を下げた。
それだけで、まるで全身をその大きな手で撫でられたみたいに、私の身体はざわざわとときめく。
鞄を無造作に机に引っ掛けて、長い足を持て余すように席に着いたrkwくんを、私はこっそりみつめつづける。
けれどrkwくんも、私がみつめていることに気づいている、絶対。
だって、その大きな手で頬杖をついたかと思うと、こちらにちらりと視線をくれたから。
形の良い顎を乗せたその指が、昨日の夜、私の身体をなぞっていったことを思い出す。
昨日はrkwくんのご両親の帰りが遅いというので、少しだけお宅にお邪魔した。ほんの、一時間ほど。
rkwくんの熱い手が私を部屋まで引っ張っていき、扉を閉めるのももどかしく二人ベッドに倒れ込んだ。
荒々しく制服のボタンが外され、リボンもブラウスもスカートもすべて中途半端に、けれど身体を繋げるためには十分なくらいにはだけられ、覆い被さってくるrkwくんを受け止めた。
どんなに急いでいても私に触れるrkwくんの手は優しい。羽毛を撫でるように優しく、ゆっくりと肌の上を這っていく。もっとして、と強請りたくなるけれど、見上げたrkwくんが苦しそうに眉根を寄せているから、私は慌てて口を噤む。
目蓋、こめかみ、頬、もちろん唇。空気に晒されている身体中に、rkwくんは口付けを落とす。それを受け止めるたび、私の頭はくらくらしていく。
お互いの身体の境界線が曖昧になって、このまま二人溶けてひとつになってしまいたい、と思う。
「すき」
小さく囁けば、rkwくんの私を抱きしめる力がより強くなった。音を立てて首筋を吸われる。
と、身体の奥を突かれる衝撃が強まって、私もrkwくんにいっそう力を込めてしがみついた。
思わず顔が熱くなってきたのを感じて、慌ててrkwくんから視線を逸らした、その時だった。
「あれ、ここ、どうした?」
そう声を掛けてきたのは、後ろの席に座る友人で。
「え?」と振り返れば、彼女の顔に、絵に描いたような笑みが浮かぶ。
「キスマーク、ついてる」
耳元でそっと囁かれた言葉に、咄嗟に手で首筋を覆った。rkwくんが、昨日の夜とくべつ長く口付けたそこ。
「髪、下ろしてればバレないよ」
パクパクと口を動かすことしかできない私にそうアドバイスをくれた友人は、まるで気にも留めない様子で授業の準備を始めている。
根掘り葉掘り聞かれないのは有難い。rkwくんとの関係は、教室にいる誰も、親友ですら知らない。
確かにrkwくんは抱き合っている時、よくうなじにキスをするなあと思っていたけれど、まさか痕を残しているなんて、思ってもいなかった。
指摘された首筋を押さえながら、そっと窺い見ると、rkwくんはかすかに口角を上げた。まるで悪戯が見つかった子どもみたいな笑い方に、もう、と思いながら、私の胸に込み上げてきたのはくすぐったいほどの喜びだった。
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ほんのり夜って書いてポストしたけど、結構夜だったかもしれない……。
付き合ってるのを隠してる恋人たちが好きなので他キャラでも想像中。