Xに載せたものです
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「もう無理。振られた」
そう言うと、「おー、じゃあ飲みに付き合ってやるよ」とfjmに居酒屋へ連れていかれた。
隣の席と簡易な仕切りで区切られた、よくあるチェーン店のざわざわした空気が、余計に私の口を滑らかにする。
「だってさ、お前と付き合ってると惨めになるって言われたんだけど、意味わかんなくない!?」
「まー、そうだな」
「何で!?あんなに尽くしてきたのに!」
「それが重かったんじゃね?」
「全然そんなことないもん!」
「それはお前が決めることじゃないだろ」
慰めてほしいのに、fjmはそんな簡単な言葉をくれない。ていうか慰めるために誘ってくれたんじゃなかったわけ!?
「ていうかfjmはいいの?彼女怒らない?」
私だったら、彼氏が他の女と二人で飲んでたら絶対嫌だけど。
「は?彼女今いないけど」
「え!?そうなの?ちょっと前デートしてなかった?」
「別れた」
「……(知らなかった)」
「お前、ほんとオレに興味ねーのな」
「だって、どうせfjmは女の子よりどりみどりでしょ!」
呆れたように言うfjmにそう返すと、「ま、その通りだけど」と鼻で笑われてイラっとする。
「どこかにいないかな、私のことちゃんと好きになってくれる人……」
「好きになってくれれば誰でもいいのかよ」
「そういうわけじゃないけど…」
「そう言ってるようなもんだろ」
「だって……」
私のこと、ちゃんと好きになってくれるひとと、出会える気がしない。
いっつも彼女っていう肩書きとか、体とか、外面的なものだけ求められている気がする。
「それはオレのアドバイスをちゃんと聞かないからだろ」
「だってfjmは、どの人紹介したってダメっていうじゃん!なんで応援してくれないの?!」
そう言えば、fjmの纏う空気がぐっと冷えた気がした。
「あー、じゃもう勝手にしろよ」
fjmがそう言って、席を立つ。え、待って。何で突然そんな不機嫌になるの。
私のグチを最後まで聞いてくれる人、fjmくらいしかいないんだけど。
慌てて追いかけようと立ち上がれば、思ったより酔っていたのか、ぐらりと視界がまわった。
倒れる、と覚悟を決めたけれど、そうはならなかった。
いつの間にかこちら側にやってきたfjmの腕が、私の体を支えていた。
「ご、ごめん」
思ったより近い距離に、身を引こうとする。
けれどfjmの腕はしっかり私の腰にまわされていて、びくともしなかった。
「なあ、オレに彼女がいないの、本当に気づいてなかった?」
「え……、だってこの前までいたよね? 去年も別の子と付き合ってたし……」
「お前が、誰かと付き合ってる時しか彼女いねーし、お前が別れたらこっちも別れてんだよ」
そう言うfjmの頬は赤く染まっていて。
多分これは、お酒のせいじゃない。
「な、な、なんで……」
パクパクと口を動かせば、その唇を親指と人差し指でふにっと摘まれた。
「自分で考えろ」
そう言って、私を立たせたfjmは、今度こそ伝票を持ってレジへ向かってしまう。
店内の喧騒が耳の奥から消えていく。fjmの後ろ姿だけがなぜかくっきりと浮かび上がって見える気がした。
「fjm、待って!」
荷物を抱えて、慌ててその背中を追った。
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なんでか同い年のfjmはいっつもケンカップルになっちゃう。大人なfjmに慰められる話も書きたいですね。