ふと中学生ごろの時に舞妓さんになりたかったのを思い出した。芸事に勤しんで、まったりと響く京言葉でささやき、髪を結い、白粉をはたいて、華やかな着物に身を包む姿に憧れた。今となってはもう叶わないことだけれど。年を重ねるごとに叶わないことは増えていく。それも全て選択の末だ。代わりに手に入れたこともある、きっと。
今よりも若い頃はどうでも良いことに囚われて、やってみたいことを自分で我慢してきた。メイクするのはダメかも、学校をサボっては大変かも、派手な服なんて目立つグループにもいないのに良くないかも。今となってはそんなことなんて気にしなくてもよかったのに、と思う。周りの大人から見てもきっともっと自由に生きられるのにと思われていたのかもしれないが、まあそんなこと言われたこともなかったので、別に周りの大人は私のことを特につぶさには見ていなかったのかもしれない。年を重ねるごとにやっても良いと思えることが増える。最近少し若返ったのも我慢しなくなったからだろう。年齢以上に老けてから、一気に年よりも若くなった。
若い頃は無謀だったけれど、というのは私には当てはまらない。若ければ若いほど何が待ち受けているか分からなくて臆病になる。経験したことが増えると案外大変なことにはならないことに気がついてどんどん大胆になっていく。この世を去る頃には私はどれだけ自由になれるのだろうか。