コードを書くエンジニアにはもちろんのこと、そうでないITエンジニアの方にも広くおすすめしたい本でした。
どんな本か?
Azure Functions を開発するソフトウェアエンジニアである著者が、Microsoft での同僚やマネージャー、メンターとの関わりを通じて発見し実践したことや、前職での経験・そして現代の潮流から「どうエンジニアとして幸せに働き、生きるか」についてまとめられた本です。
序盤はコーディングやコードリーディングをどう進めるのかという具体的な話から、マインドセット(Be Lazy)、情報整理し記憶するという姿勢についての話へと進みます。そして仕事を進めるうえでのコミュニケーションで大切にしていること、チームビルディングへと話が展開していきます。
終盤は、生活習慣に着目した「一人の人としてどうより良く生き、働くか」について、最後にChat GPTをはじめとするAIに衝撃を受けた著者が、同僚などとのやりとりを通じて気づいた「個人や組織が変化していく力」の重要性について言語化されています。書籍全体としては以下のような流れです。
個人の手(技術)→個人の頭(思考)→個人の心→人との関わり→チーム→(個人の生活習慣)→組織→時代
日々の業務に生かせる技術や考え方はもちろんのこと、個人的には終盤の内容が刺さりました。すでに多くの方がお読みになったかとみえますが、改めて私の思考の整理のためにも書き留めておこうと思います。
印象に残ったこと
「すべき」ことへの時間割り当て
「すべき」から時間を計算するのではなく、時間は固定して、その中で価値を最大化するという行動をとっている。
時間は有限。アタマではわかっているけど、日常の思考として「やるべきことは何か?→これにはどのくらい時間がかかりそうか?→それに合わせてスケジュールする」という手順をとっているので、この考え方に新鮮味を感じました。職種が異なる(お客様のスケジュールがあることもしばしば)ので100%できるわけではないが、自分でコントロールできるところからトライしてみようと思います。
周りに「クイックに」聞く
しかしインターナショナルチームでは原則として、自分にその分野の「メンタルモデル」や「コンテキスト」がなければ、すぐさまエキスパートに聞いたほうがよい。相手が忙しいかどうかは考える必要はない。メッセージを送ってスルーされたら忙しいんだろうなと思うようにすればよい。クイックコールがすぐに無理なら、ミーティテングの設定を依頼する。
これは本当にそうで、「〇〇について知りたいので今から電話してもいい?」とサクッとチャットしてくる人は理解も早いし効率的に働いている印象。以前私がファシリテートしているミーティングにスポットで参加してくださったシニアエンジニアが「〇〇っていうサービス、最近ぜんぜん触ってないからざっくばらんに教えて」とコールの依頼が来てお話したことがあります。できる人は誰にでも当たり前に「自分は知らない」を表明してお願いして、ぐびぐび吸収して活かしていくんだなと衝撃を受けた出来事でした。
ディスカッションや会話への姿勢
ここでのディスカッションの目的は、「お互いが持っている意見を交換して、知識や考えを深めること」。自分のわかってなかったこと、気づいていなかったことを知ることができる楽しい機会と捉える。
ディスカッションは「どちらが正しいか」はどうでもよく、「自分の考えを自分なりに深めるための行為」なので、初心者こそやったほうがいい。コツは、「間違えたら恥ずかしい」という感覚は一切捨てること。
これはディスカッションの前に毎回読み返したい部分。数年前よりはだいぶましになったけど、まだまだ「間違えること」に対して恐怖を感じることがあるなぁと思います。
言ってみれば、楽しんだもの勝ち。意見が違う人がいても、面白いフィードバックが得られたな、違う意見が聞けたと喜ぼう。知らないこと、よく理解できていないことは正直に言おう。相手がだれであっても、結局はそのほうが有意義なフィードバックを得られて絶対に得だ。
先の「間違えること」への恐怖に通じるところではあるが、根本的にはコミュニケーションは新しいことや考え方を知れる機会なのだから、楽しいものであるはず。
生産性を上げるには定時に仕事を切り上げる
「生産性を上げるためには学習だよ。だから、僕は仕事を定時ぐらいで切り上げる。その後で、自分のやりたいトピックを勉強したり試したりする。
来週からのアクションリストに上げました。定時後に学習するのは必要に駆られたものではなく、「自分のやりたいトピック」という点が非常に重要だなととらえています。そうすれば自然と定時後が楽しみになるし、仕事にも生かせるようになる(かもしれない)し。
コントリビュートと感謝
SNSを鬱憤ばらしに使うのではなく、我々にできる「小さな貢献」を考えてみたい。素敵なアプリを見つけたら、つくってくれた人に対する感謝を発信してみよう。そういう声がいくつかでもあると、ネガティブな批判者から受け取る痛みが軽減されるし、より生産的になれるものだ。
この一文を読んで、この書籍の投稿をしようと決めました。また、今使わせてもらっている「しずかなインターネット」のスポンサーにもなりました。素敵な書籍やサービスを作ってくださりありがとうございます。
日本再生への道すじ
著者の熱意は書籍でお読みいただけたらと。
私は日本企業で働くエンジニアさんの支援を仕事としているのですが、本当に真面目で優秀で、「働き方も含めてサービスをよりよくして行こう」という姿勢の方が多くいらっしゃいます。今はこういった方々の支援を通じて、その先にある日本の未来に貢献できたらいいなと改めて感じました。