序文

domo_no_hito
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身体性を伴う言葉だけで物を書いてみたい

素朴な感想文を書けたことなんてなかった、捻くれてるやつの現在

夜が寒いと思った。

外に出るにはコートが必要だ。

コートを着たら、体は寒くないが、首元や足元は寒いだろう。でもそれは我慢できるかなと思った。

息はもう白いんだろうか。昼間すれ違った人、息が白いかと思ったらiQOSの煙でがっかりした。

暖かい部屋にいると、寒い場所にいる時のことをちゃんと思い出せない。

手がひんやりして、そのうち痛くなるところは思い出せる。有名だから。それと同時に手首の腱がこわばって動かしづらくなるのは、頑張らないと思い出せなかった。ちょっとだけ手首を攣った感覚にずっとなる。前腕が薄く痺れた感じで、ものみたいになる。こんなことを全身分、しっかり全部思い出せたら楽しいな。いつでも寒い気分になれる。

秋冬の夜は、枕元の窓をほんの少しだけ開けて寝る悪癖がある。翌朝喉はガビガビだし部屋の暖かい空気も逃げるので最悪なのだが、冬の外の匂いを嗅ぎながら眠りにつける。秋冬にしかできないので、やっておきたくなる。季節のものを楽しむのはインターネットより良いもののような気がするから、生活に取り入れていきたい。

大晦日、正月付近は、明確に夜の匂いが違う。つんとして、嗅ぐとしゃきっとする。この匂いを嗅いだとき、部屋がまだ汚いと、今年は大掃除ができなかったな、と後悔する。たいていの場合大掃除どころか普通の掃除もできていないので尚更気分が沈む。数年前、この匂いを嗅いでから大掃除を始めたことがある。三が日の休みを使って、部屋を隅々まで片付け、模様替えもした。やらないよりはずっと良いなと思ったし、ずっとこんな生き方をしているな、と思った。

コンビニは、作り物の味のパンばかり置いているし、人がいない時間もずっとやっているから店員の人が大変そうで可哀想だし、どこも大体同じ見た目をしていて楽しくないのであまり好きではないが、突飛なことをしたい時に開いててくれるのでありがたい。

高校生の時、突然変な場所で初日の出を見たくなって自転車でお台場に行ったときもコンビニは空いてたし、先週、終電で寝過ごして寒い中2駅歩いて帰った際はコンビニのおでんが暖かくて最高だった。廃棄の時間なのか、少しおまけしてくれた。

暖かい部屋でそれを回想する僕は、誰かの善意に漬け込んだ商売だなとうすら寒いことを考えているが、多分そのときどきの私は、心の底からありがたいなと感じていたはずだった。

この辺りが、いま、暖かい部屋で思い出せる、夜の外の寒さについてのほぼ全部。

もっともっとたくさん思い出したいな、と思った。

血の通った文章をみんなに見せるのは、なんだか気恥ずかしいけれども。