帰宅した。あっという間に過ぎ去った、とても素敵な日々だった。
車の運転する心配がないので、昼間からお酒飲んでも大丈夫だし、晩ご飯は居酒屋やバーで済ませても問題ないしと、ひとり旅の醍醐味を堪能した。
あと、家族連れじゃたぶん味わえない体験が、たまたまそこで出会った人との何気ない会話。
二日目に訪れた三郎丸蒸溜所では、帰りの電車まで40分くらい時間があって(運行本数が少ない)、無人駅の待合室で30代半ばくらいのお兄さんと、電車が来るまでなんとはなしに話をした。
宮城県出身の方で、いまは埼玉で働いてて、研修かなにかで富山を訪れている合間を縫って友人と蒸溜所見学に来たとのこと。その友人は別の場所に行ってて、お兄さんは試飲で酔っ払ってしまったので駅の待合室に酔い覚ましに来た、と。
東日本大震災のあと、お兄さんの故郷もぱったり観光客が来なくなってしまったけど、そのあと東北を応援しようとたくさんの人が訪れてくれるようになった、自分も、お返しというわけではないけど、富山に来ようと思った、と。
わたしも観光ですよ、地震の影響で富山から観光客が引いてしまったという話を聞いたし、ちょうど三月末までに取得しないと流れてしまう特別休暇があったし、しかも今年は鰤が豊漁と聞いて、鰤は大好きだし、これはもう行くしかないな、って。ついでにウイスキーが好きなんで、北陸唯一の蒸溜所というここに見学に来たんですよ、って伝えた。
わりとお酒が入っていい感じに酔ってて、訥々と話す姿から優しい人柄が滲み出ててよかった。
「ひとめ千本桜」っていう、すごく有名な桜の名所があるんです、僕の生まれ故郷です、もしよかったら見に来てください、日本でいちばん綺麗な桜の名所だと僕は思ってます、って。スマホの写真を見せてくれた。妹の結婚式で里帰りした時の写真なんですよ、こんな感じの桜が綺麗でしょ、川に沿ってずっと桜が満開なんです、あ、これ妹の結婚式の写真で、こんな感じで披露宴してですね、あ、すみません、結婚式関係なかったですね、って。
電車が来たのでお兄さんとはそこでお別れ。でも、いつかひとめ千本桜を見に行ってみたいなって思った。
お兄さん、いつか行くからね!