リチャード・ストルツマンの演奏を聴いたのはかれこれ30年ほど前になる。
クラリネットって、吹奏楽ではなんとなくバイオリンの代役で賑やかし的な立ち位置というイメージを漠然と抱いてたんだけど、そのコンサートは、ストルツマンのソロで、何曲かはピアノ伴奏つきだった。
どっぷり吹奏楽やアンサンブルにハマりながらもあまり音楽には詳しくない自分でさえ、ストルツマンの名前は耳にしたことがあって、たぶん雑誌かなにかだったと思うんだけど、それだけクラリネット奏者としては有名な人だった。
そのストルツマンの演奏が、それはもう圧巻だった。クラリネットって、たった一本でこんなにも大きな音が出せるのかと驚いたし、その技術に鳥肌が立ったものだった。
特に無伴奏のソロ曲(曲名失念)では、全くの無音からの淀みないクレシェンドが、もう、言葉では表せないくらい美しく大きく大らかで深いクレシェンドが、ほんとうに印象深かった。
芸術家というのは、無からなにかを創り出せる人のことなんだ、と思った。
そのときの伴奏者が仲道郁代さんで、あまりの可愛らしさに、会場で売ってたショパンのノクターン集のCDを即購入した。まだピアノ曲にぜんぜん興味がない頃だったのに。