読書メモ「セミコロン」

dtanaka
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書籍

セミコロン 〜かくも控えめであまりにもやっかいな句読点〜

https://sayusha.com/books/-/isbn9784865283839

メモ

セミコロン is 何?

  • カンマとコロンの中間的な存在として誕生

  • カンマ:日本語での読点(、)ざっくり言うと**「区切り」や「つけたし(挿入や同格)」**のために使われる

    • 例)私たちは今朝りんご, オレンジ, そしてキウイを買った

      • We bought apples, oranges and kiwis this morning.

    • 例)雨が降れば, 遠足は中止になります

      • If it rains, the day trip will be cancelled.

  • コロン:区切りや付け足しだが、コロンの前後が同格。「つまり」に置き換えられる

    • 例)ジムに行く時間がほとんどない:2週間後には新しい仕事が始まるからね

      • I have very little time to go to the gym: my new job starts in two weeks.

  • セミコロン:コロンよりも弱めに区切りたい。同格ではなく、繋がりを示す(※諸説あり)

    • 例)我思う;ゆえに我あり(I think; therefore I am.)

生まれ

15世紀頃に、とある物書きが編み出した。コンマとコロンの中間ほどの休止を表す存在が欲しくなったため。当時は句読点の使い方が整理されておらず、物書き達が創意工夫して、セミコロンに限らず多種多様な記号が編み出されては消えていった。セミコロンはうまく定着した。

18世紀;科学的アプローチの時代

元々セミコロンの用法は芸術に近かったが、文法家達が科学的に文法を解明しようとした。ルールを整理して書籍を売り出したり。統一的なルールを手に入れようと躍起になっていた。中にはシェイクスピアなど文豪をこき下ろす芸風の人も居たりとか。

セミコロンは割と雰囲気で使われがちだったので、ルールの整理や統合は難航。文法家同士で壮絶なバトルが繰り広げられた。結局収束はしていない。

19世紀;セミコロンによる実害

法律の条文にセミコロンが使われて社会が混乱する事案が発生。

以下の条文。元々セミコロンは使われおらず、解釈の幅が少ない状態だった。

夜11時から朝6時までの間において,および安息日には酒類の販売を認めないが,ただし販売免許保有者が宿泊施設の免許も有する場合,食事ならびに宿泊のために施設を利用する客への酒類提供はその限りではない。

  • 解釈: 宿泊施設の免許を持っていれば、夜11時〜朝6時までの間も酒類を販売できる

しかし、法改正のタイミングでカンマがセミコロンに変わってしまった。誰かが書き換えたらしいが真相は不明。

夜11時から朝6時までの間においては酒類の販売を認めない;これは安息日にも及ぶが,ただし販売免許保有者が宿泊施設の免許も有する場合,食事ならびに宿泊のために施設を利用する客への酒類提供はその限りではない。

  • 解釈1: 宿泊施設の免許を持っていれば、夜11時〜朝6時までの間も酒類を販売できる

  • 解釈2: 宿泊施設の免許の有無に関わらず、夜11時〜朝6時までの間は酒類を販売できない。ただし、宿泊施設の免許があれば、安息日に限っては酒類を販売できる

市長が敬虔なクリスチャン。禁欲派だったので、解釈2 を採用してしまった。ホテル業界や酒好きの住民が猛反発して大混乱になった。住民も禁欲派とゆるふわ派で分かれて論争に。

最終的に、セミコロンは条文から消滅。酒類の規制を緩める方向に落ち着いたが、そこに至るまで6年かかった。

その他の事例として、死刑になっちゃった話もあるけど割愛。

エピローグ;筆者の思い

規則は必要だけど、過剰にはならないで欲しい。18世紀、文法家がルールを整備しようとしたときのバトルが見るに耐えない有り様だった。書籍で人格攻撃するみたいな。

絶対的に正しい文法は存在しないし、解釈のゆらぎが存在する。特に他人の文法ミスを指摘するようなことはせず、伝えたい本質に目を向けてね。