to : Yanqui U.X.O.

平野望 / dysfreesia
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公開:2026/3/17

Godspeed You! Black Emperor『Yanqui U.X.O.』の裏ジャケに刻まれたものは割と有名だ。それは2002年当時の音楽産業と軍需産業・武器製造業者との関係性を示すチャート図である。図面上では4つの主要レコード会社 (ワーナー、BMG、ソニー、ユニバーサル) を経由して矢印が進んでいき、その中心にある”Yanqui U.X.O.”、即ち彼らが言うところの「多国籍企業寡頭制が抱える不発弾」へと向かう。周知の通りだけれど、不発弾は「未だ爆発していない」だけで「これから爆発する」ことは十二分にあり得る。時折ニュースで流れる回収作業の様子を通じて、私たちは現場に満ちているであろう切迫感を受け止めてきた。

これは25年前に作られたチャート図だが、残念なことに大きく書き換わっている訳ではない…いやそれどころか、経由する矢印はどんどんと増えているはずだ。これも比較的有名な話だけれど、ちょうど先日SpotifyのCEOを退任した悪名高きダニエル・エクが資産を投じていたのはドイツの防衛AIソフトウエア新興企業であるヘルシングだった。約1,033億円も投資していたらしいが、これは現在の社会のバランスを象徴しているかもしれない。烈火の如く盛り上がるAI産業と音楽業界は当然のように関係し、そしてその先には軍需産業がある。ちなみにダニエル・エクご本人は「個人的には(批判を)気にしていない。自分が正しいと思うことをすることに重点を置いており、これが欧州にとって正しいことだと100%確信している」と発言されているみたいですが、彼の「正しさ」を多くの音楽家がどう受け止めているかはご存知の通りだ。付け加えておくと、この「正しさ」は元CEOに留まった話ではなく、Spotify自体も2024年のトランプの大統領就任式の際に約2300万円を献金している。個人的にも、これらの「正しさ」の在り方は批判されるべきだと思う。ノーベル平和賞を取れなくて拗ねているあいつを見てみろ。醜いだけでなく邪悪だと思う。

──そう、邪悪だ。いまホルムズ海峡に自衛隊を送り込もうとしている首相も、幼稚なだけでなく邪悪だ。「(防衛産業・兵器輸出を)経済成長にもつなげる。国民生活の豊かさにもつなげる。そして国をしっかりと守る、そういう時代に入っている」と彼女は堂々と口にした。国会答弁を見ていたが、彼女は質問に対して余裕綽々とでも言いたげな笑みを浮かべる。その笑みは、子どもっぽいのではなく、幼稚だった。強がりの演技だ。論理も倫理もすっ飛んでいる彼女は卑屈に笑うことくらいしかまともにはできないが、その傲慢によって”Yanqui U.X.O.”に向かっていく新しい矢印が書き込まれるかもしれない。日本の音楽産業もどんどんと書き込まれていくだろう。ちなみに…川崎重工や三菱重工には既に防衛部門がある。第二次世界大戦時に日本の航空機を製作していた2社は、戦後も防衛省と直接取引をしてきた。その取引先が防衛省のみである為にビジネスの拡大は難しかったのだが、彼女の発言によってそれが変化するかもしれない。この国で作られた兵器が他の土地で人を殺す為に稼働する可能性を平然と受け入れることが、私にはどうしても難しい。歴史はまた同じところに落下していくのだろうか? 『Yanqui U.X.O.』のジャケに写された降下していく弾頭のように?

私はあらゆる戦争ビジネスを否定する。そしてそれを堂々と口にしてみせた高市早苗氏を批判する。弾頭のみならずあらゆる兵器を容易に増やしてはならない。それは今、確実に着火する為に作られていくのだから。

@dysfreesia
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