タイのレッドブル何本飲めるかチャレンジ

e_chigusa
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予め断っておくと、この話には十年も前の、アホな大学生しか出てこない。

パリピ過剰摂取にご注意だ。断ったぞ。いいな?

大学時代に私が参加していたサークルで、タイに海外遠征をする機会があった。国内で優勝したチームに与えられる、国際大会のチケットだ。出場メンバーは当然、ものすごくピリピリしていたけれど、私達は応援という名の賑やかし。万一の事態に備えて現地のショップを調べておいたり、諸々必要になりそうなものを運んだりはしたが、大会が終わってしまえば本当に何の役目もない。レセプションという名のパーティが開かれ、観光ツアーが組まれ、帰国までどうぞごゆっくりお楽しみください、と気楽なものだ。

当然、馬鹿をやる奴が出てくる。馬鹿というか無茶。現地の学生とディスコに出かけてぶっ倒れてホテルに担ぎ込まれたり、よく分からん露店のよく分からんアイスを食して帰路の空港の土壇場で吐き散らかしてドクターストップが掛かったり、あの真面目な〇〇君が!?みたいなことを各々が散々やらかした。

私? 私はちょっと記憶にないんですがレディーガガはタイでも当時めっちゃ流行ってて世界中の学生が好きに踊ってて面白かったなって。

それはさておき。

M先輩が、タイのレッドブルは日本のカフェイン量のX倍みたいな話を聞いたらしく、何本イケるかやってみようぜとダース買いしてきた。イケなくなった時の保険などない。ただの自殺行為だ。詳細に覚えているわけではないので、以下は私主観の再構成となる。

馬鹿じゃないの!と仲良しのA先輩に散々笑われたM先輩は、ホテルの部屋の床に座り込み、缶を片手に持ちながら彼を制した。

「まあ待て。まずは一本開けるじゃないですか」「はい開けましたね」

「飲みます」「飲んじゃいますか」

「炭酸きち~!」「そりゃ、そうだわな」

「でも飲みました」「一本飲みましたね」

「まあまだ何も起こらないわけですよ」「起こってからじゃ遅いんですけどね」

「まあ待て。もう一本開けるじゃないですか」「はい開けます」

「飲みます」「行くねぇ~」

「飲みました」「ちなみにお味はどうなんすか」

「甘い」「あっ、はい」

「はい。そしてここに次の一本があるわけで」「ありますね」

「開いてます」「今開けましたね」

「なので飲みます」「まだいける」

「いけました」「さすが」

「そこでまた一本開けます」「もう、いいんじゃない?」

「いやまだ余裕だから」「普通に炭酸キツそう」

「飲みました」「本当に余裕だった」

「ゲェ~ップ」「出るよねそりゃね」

「なんかちょっとキテるかもしれん」「おっ、ついに!」

「いち、に、さん、し……」「まだ4本目ですね」

「まだいけるな」「根拠を述べよ」

「まあまあまあ。とりあえず開けるじゃないですか」「開けちゃう~」

「はい飲んじゃう~」「飲んじゃう~」

「空けちゃう~」「空けちゃった~」

「次いく~」「いっちゃう~」

「開けちゃう~」「はい開けちゃう~」

「飲ん……ちょっと待って」「おおーっ!ここでギブアップか!?」

「なんか酔っぱらったみたいになってる」「アルコールは入ってないですよ」

「昨日の酒かな」「そんなまさか」

「とか言ってる間に飲めました」「無茶しちゃう~」

「うぇ~い7本目で~す」「半ダース超えましたね~」

「……キツイ」「本音出た」

「まあ飲むんですが」「何と戦ってるの」

「己」「どっちみち負けるけどね」

「あ、鼻血出た」「アカン! ストップです!」

「いや勿体ないからこれだけ」「やめなさい! 僕が飲むから!」(ここの僕が飲むから!は鮮明に覚えている辺り私の業が深い)

「これ、ヤバい、命の危険を感じる」「それ見たことか!」

それからM先輩はホテルの床とお友達になった。後から聞くと、動悸、息切れ、眩暈、頭痛、吐き気、などに襲われていたらしい。彼の発言的には多分、すでに4本目の頃から。

私達は彼を他山の石とし、カフェインこえぇ~となりながらも7本までならイケるんだな(やらんけど)という知見を得たのだった。

……やるなよ!!!

@e_chigusa
割と元気な字書き。旦那と娘の話もします。