気づいてくれなくても

eas
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例えば、LIMEについてくるハートマークの意味ってなんだと思う?と、1人で消化できずに頼り甲斐のある同期に問いかけていた。相談というより懇願に近い。自分の思い上がりを覚まさせて欲しくて、冷静になれと水をかけて欲しくて投げた質問は、あからさまに眉を下げた渡部に、「そんなもんお前が受け取ったまんまじゃないの」と、呆れ顔で返されてしまった。

勿論、泉を大切に思っているし、常に思いは通じている自負がある。それでも尚言い尽くせない感情が、彼女の他愛ないメッセージの後ろに着く絵文字一つで揺らいでは火がついてひとりでに燃え上がっては心を焼いた。まるで思春期かと自嘲するが、笑い飛ばしても熱が冷めるわけでもなく、大きなため息をついてまるでそれを見なかったような返事をすることが多かった。

それを、何も思い過ごしでないと言われるとそれ以上の言葉がない。

「……なんか、その、すまない」

「いいや、幸せそうでなにより」

まさかそんな真剣に惚気けられるとは思わなかったけどなあと笑いながら、男は俺の赤面を茶化す。そうして、おんなじ気持ちなら同じく送り返してやりなよ、と言われて、思わず身体が硬直した。

「俺から?」

他に誰がいんのよと、また面倒そうな顔をして、きっとお前と同じくらい玲ちゃんだって喜ぶと思うけど。

そうか。お前がいうのならそうなのかもな。

その声が相手に届いたかは解らない。

手中にあるスマートフォンの画面を叩いて、昨晩のおやすみの後ろについたハートマークをなでて、そうかともう一つ頷いて。何やら横で男の声が聞こえてくるが上手く頭に入ってこないままに、質素な返信のあとに途切れた会話の続き。

玲がおくってきた、絵文字のまんま。

会いたいの言葉と共に、愛を込めてつけた絵文字は、きらきら輝いて。その隣に既読のマークが着いた途端に、端末が俺の緊張と共にブルブルと震えて、愛する恋人の名前を表示した。

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