**ちょっと幾分やらしめなのでご注意**
ベロ出してみ、
そう言われて露骨に顔に出た拒絶を、男は、大人のキスしりたいて言ったの聡実くんやんと鼻で笑って、歪んだ口端に親指を捩じ込むと力任せに口を開けさせにきた。
「っ」
そりゃ、興味本位で言ったのは俺だけど。
俺と狂児がするのはまた別の話だ。
だからそういうんじゃないと突っぱねようとしたのに、無理に露わになった舌を、男の唇にまんまと食われて反論も出来ずに戸惑いのまま声になりきれ無かった息が漏れただけだった。
ぢゅ、と舌を根元からいかれるんじゃないかと思う勢いで吸われて、口の中を狂児の長い舌が好き勝手に動き回る。
初めてがこんなの嫌やな、て思って
でも、初めてなんが狂児なのは悪くないな、て。
思っていると鼻先から女のような熱のこもった吐息が漏れた。瞬間に至近距離で男と目が合う。なに考えてるのかよくわからない底のしれない相貌が、俺の全てを見透かそうと瞳孔を開く。
「んぁ」
変な声。俺じゃなくなったみたいな。
あの、変声期の別人に成り代わるような変な感覚。気持ちがいいとか、狂児の口んなかが思ったより温かいとか、乱暴だった指先がいつの間にか宥めるように耳を撫でつけるのが妙に安心するとか、消せない煙草臭さとどこでつけてきたのか分らない微かな香水とが混じったいつもの男の匂いが少しだけきついとか。色んな情報が頭に入っては次から次へと抜けていって、結局なにも掴めないまま目を閉じていた。
ただ、誘われるまま舌を這わせて、吸って。たまに離れて、薄い唇を啄むように遊んでみて。
「間違うた」
離れた隙間で独り言。
「なに?」
「……告白より先にキスとか絶対におかしい」
あゝ、全て間違えた。そんなん口に出さなくてもよかったのに。
「なに、俺に告白してくれるの」
嬉しそう、ていうか満足気な男は臆する素振りもなくて。どうだったかな、とつい嘯くと、決死で離れた身体はすぐに詰められてしまった。
なあ、好き、て言ってくれんの。
そんな顔でいうやつには言いたくない。言ってやるもんかと思うのに、な?と甘えるような声に頭を焼かれて、こんなキス一つでやる気を出した股間のてっぺんを男の左手の甲が撫でつける。
「なあ、聡実くん。」
「……知らん」
「知らんて、そんなつれないこと言わんで」
言ってみ。
て。
言ったら、どうなるの。
て、尋ねると。
「もっと仲良くなれる」
危ないおじさんは、笑顔を張り付けるのもやめて言う。男が喉を鳴らすと、ジジ、とファスナーを下ろす音が鼓膜を揺さぶって、躊躇い果てに俺は男の名前を呼んでいた。