ウィキッドを見た。小学生の時に一度観たきりでストーリーの記憶がだいぶ薄れており、新鮮な気持ちで観ることができた。
いろいろな含意やメタファーの詰まった風刺的な作品だが、単純化すると欲望と代償の話なのだと思う。最も象徴的なのは、エルファバは自分の娘だったとオズの魔法使いが知る場面だろう。「家族がほしかった」と語り、広大なオズの国を歪んだ我が家とした彼にも娘がいた。もっとも、彼自身の手でスケープゴートに仕立て上げて殺してしまった(彼はそう思っている)わけだが。
みんなに愛されたいと願い、民衆に崇められる「善き魔女」となったグリンダにしても、生涯罪を背負って偶像として生きていくわけだから考えようによっては一番つらいと思う。
個人的にはボックとネッサローズのカップル(と呼んでいいのだろうか……)が好きだ。グリンダに横恋慕するボックと、初めて自分を気遣ってくれたボックに執着するネッサローズ。何年もほとんど二人きりでいただろうに、相手のことはちっとも見えていない。
ボックは数年も会っていない(名前すら覚えられていない)グリンダに会うことしか考えていないし、ネッサローズは自身のハンディキャップを盾にボックを物理的に縛り付けている。その相互不理解が二人に悲劇を招いてしまう。
どうしようもないどん詰まりに自ら進んでいってしまった彼らがとても愛おしい。それはそれとしてほのぼのif二次創作はほしい。超熱烈なファンダムで有名な作品なので、tumblrを漁れば一個くらい見つかるんじゃないか。