夢から醒めた夢

eatarolot
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人生で初めて観た舞台が「夢から醒めた夢」だった。幼稚園の年中さんごろだったと思うが、上演中ずいぶんお行儀よく、黙って舞台に釘付けになっていたそうだ。実際、私は夢醒めをきっかけにめくるめく演劇の世界に夢中になった。DVDもCDも買った。大学受験期も毎日CDを聴いていた。今にして思うと、交通事故死する少女の歌と受験戦争に敗れて自殺する少年の歌は、塾帰りの夜道にはちょっと縁起が悪すぎるけれど。

そんなミュージカルを十数年ぶりに鑑賞してきた。結論から言うとダバダバ泣いた。年々涙腺が緩くなっている自覚がある。子供が健気に頑張っているのに泣くし、母子の別れに泣くし、人間の善性に泣くし、思い出補正であらゆる場面に泣くしで、向こう三年分くらい泣き尽くした気がする。

とにかく舞台ならではの演出がいい。クライマックス、「光」になった登場人物たちがスポットライトの明かりで表現され、真っ暗な舞台に次々と現れる。そしてそれら全てが主人公のほうを向き、まばゆく光って彼女を照らす。言葉にすると陳腐だしよくわからないけれど、本当に美しくて真っ白に輝いているので泣いた。

大人になって観てみると、ちょっと説教くささが鼻につくかな、と思うところはある。言わせたい台詞のために会話があからさまに誘導されるのが気になったりもする。しかしそれを差し引いても温かくていい話だし、もともと小さな観客に向けた作品なので、このくらいシンプルでよいのだと思う。劇場にはちらほら小さな観客がいて、幕間や終演後に弾んだ声で感想を語るのが聞こえてきて大変うれしかった。私は夢醒めの何なんだ。

湿っぽくなったので、最後にオタクっぽく萌え語りをして気持ち悪く終わらせたいと思う。好きな登場人物はメソという少年だ。将来を悲観して自殺し、霊の世界で働きながらその罪を償っている。しおらしい少年なのだけれど、十歳前後のピコに「きみもお節介な女だな」と大人げない皮肉を言うわ、(同情に値する経緯はあるが)ピコの所持品を盗んで窮地に陥れるわ、その割にちゃっかり天国に行くわ……妙にアグレッシブなところがイイ。どの面下げて救われてんだお前、と常々思っている。