先日、人生で初めての同人誌というものを出した。勢いのあるカップリングにハマった経験がほとんどなく、今後いつそういう機会があるともわからない。えいや!とノリで参加申し込みしてしまった。
結論から言うと出てよかったと思う。人見知りなので当日はテンパり倒していたが、同じカップリングを愛している人間がこんなにいるのか……!と終始謎の感動に包まれていた。
あと、開場のタイミングで第ゼロ感が流れた瞬間、島一帯が湧いたのもよい経験だった。インターネット上において違うカップリングを愛好するオタクはともすれば敵対関係になりやすいが、我々は本来同じ漫画に魅せられた同士なのだな……と襟を正すことができた。いいイベントだった。何の話?
ついでなので書いた本の話でもさせてください。萌え語りは存在しません。なんか個人的な思想の話なので、二次創作に思想信条を持ち込んでほしくない人は読まないでください。ごめんなさい。
今回の本を書くにあたって、いろいろ考えることがあった。それに折り合いをつけながら完成に漕ぎ着けるために「リアルなファンタジー」というテーマを設定した。
まず、ファンタジーのほうから。私は(自分で書くなら)地に足のついた二次創作が好きなのだが、BL二次創作で地に足をつけようとすると、ものすご〜く嫌な接地をしはじめる。それは現代社会の抱える問題のせいなのだけれど、だいぶしんどい。だから、今回はあえて同性愛者を抑圧する描写を減らした。差別的じゃない、けれどリアルな世界を書きたかった。ある種の理想郷だ。結局飲み会でのマイクロアグレッション的イジリの描写を入れてしまったけれど……。
リアルのほうについては、カップリング相手限定ゲイ(造語)にならないようにした。今回の場合、受はパンセクシャルであり、攻はヘテロセクシャルを自認していたが途中でバイセクシャルであることに気づく。あまり「ボーイズ」ラブであることを強調したくなかったし、同性愛差別のない世界観ならフラットであるべきだと思ったからだ。もちろん、これは原作を読んで抱いたキャラクターに対するイメージの反映でもある。
学生時代の受が攻への片思いに悩む場面も、リアルの反映だ。往々にして、思春期の同性コミュニティでの恋愛感情は「思春期特有の勘違い」ということにされがちである。しかし、何を言われたってそこにある感情は本当なのだと言いたかった。あなたの感情はあなたのリアルである。
私はBLをものすごく愛している。だが、いざ自分で書いてみると、そこで描かれる世界と現実との落差に悩むことになった。今回こういう形で補助線を引きながら書いてみることで、少しずつ向き合い方がわかるようになってきた。おかげさまで倫理的にカスすぎる話を何本も描けるようになったし。それもそれでどうなんだ。
色々書いたけど、根っこにあるのは「ワンナイト再会ネタって萌えるよね!」というリビドーです。オチのない話ですみません。