Come From Awayを観た。
9.11同時多発テロの裏側、アメリカの上空ではたくさんの飛行機が着陸許可が降りずにいた。彷徨える異邦人たちを数多く受け入れた空港がカナダにあるガンダー国際空港である。ということで、実話に基づいたミュージカル。
ある日突然知らない田舎町に放り出されたよそ者たちと、混乱し憔悴する彼らを迎え入れる地元住民たちの交流を描いている。
劇中に登場するエピソードやキャラクターには具体的なモデルがおり、たとえば二人揃ってケビンという名前のカップルや、アメリカン航空初の女性機長も実際に飛行機に乗り合わせていたという。
基本的にはハートウォーミングでちょっと笑える人情噺だが、端々にテロ当時の緊迫感や焦燥感、後に世界中で渦巻くイスラム教徒への偏見などが散りばめられている。ドラマらしいドラマは少なく、ガンダーでの怒涛の数日間に起こったエピソードの断片が描かれるだけの作品だが、理想郷のような片田舎と、如何ともしがたい情勢とのバランスが作品に起伏をもたらしている。
というか、こういう起伏の少ない話をうまく作るのは本当に難しいと思う。実話ベースともなると、エピソードの取捨選択にもかなり苦労するだろうし。
少人数のキャスト、転換のないセット、短い尺と総じてコンパクトさを意識した演出も好みだ。人間の力を信じている。舞台はアナログなほどいいと思う。こいついっつもこれだな。
気になった点。100を超える登場人物を12名のキャストが演じ分ける関係上ある程度は仕方がないことなのだろうが、ゲイや一部の民族の表象にいや〜なステロタイプなものを感じなくもなかった。このあたりは演技の匙加減でなかなか難しいと思うけど。
実は本作、ブロードウェイミュージカルとしてはかなり珍しいことにApple TVで劇場公演の模様を配信している。興味のある方はぜひ。https://www.youtube.com/watch?v=u9BWFufevng