0103ニュース速報

edamariko
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少し前まで、ニュースの近くにいる仕事をしていた。お休みに何かが起こると、今も体の真ん中の奥の方が小さくズキンとする。

2024年の始まり、だらだら過ごすいつものお正月の様相が変わったのは、元旦の午後、いつものように家族で実家に集まり、パートナーはいるけど結婚していない妹が人生ゲームでルーレットを回し、結婚するコマに止まった瞬間だった。

「うわ、おめでとう!」「ついに結婚か〜!」「新鮮!」、盛り上がりまくる私たちの声にかぶさるようにつけっぱなしのテレビから聞こえてきた、警報音。

地震の緊急速報だ。画面に映っている街並みの一部に、家屋の倒壊を示す土煙が上がっているのが見える。なにこれ。……大きいね。範囲も広いよ。津波大丈夫かな…。

それぞれにつぶやきつつも、そのまま「大地を揺るがすほどの衝撃!」と結婚ネタで盛り上がった。不謹慎ごめんなさい。さらに妹の小さなクルマはすぐに子どもが生まれるマスに止まったのでふたたび笑いが起きた瞬間に、次の警報音がテレビから聞こえてきた。

え。これ。まずくない? そこからはみんな頻繁に届く速報音のたびにテレビ画面を見ながら、なんとなく落ち着かない気持ちで、それでも小学生の甥っ子もいるのでそのままルーレットを回し続けた。

久しぶりにやってみると、人生ゲーム、中身がかなり変わっている。結婚しなくても子どもを持てたり、買える家の種類にタワマンとかタウンハウスが増えていたり。途中でもらえる金額も抑えめで、前はもっと簡単に手に入った白い10万ドル紙幣も終盤までもらえなかったり。

でもジャンケンで勝てばキャンピングカーみたいな高額なお宝が選べたり、株の乱高下や、保険を持っていると支払わなくていい火事や事故のマスが増えていたりなど、よりリアルな作りになっている気がするのは自分がよりリアルに人生ゲームをしているからでしょうか!

そうしている間にも、テレビ画面の中の警報や速報アラーム音の頻度は増えていく。みんなだんだん画面のリアルに圧倒されていった。最後のマスで25万ドルを失って一気に人生の坂を駆け下りた弟に大笑いしつつ、人生ゲームはみんなめでたくゴール。でも毎年みんなで見るのが習慣になっていた格付けやウィーンフィルの中継も次々となくなり、テレビをつけたまま、だらだらがやがやと過ごすいつもの元旦の宴は、何となくいつもよりも早くお開きになった。

翌2日は、これまた例によって箱根駅伝を見てから、もはや親戚のような夫の幼馴染一家が招いてくれた新年会へ。18時前、まさに出かけようとしていた時、テレビに何かが燃えている画像と、ニュース速報が流れた。羽田空港の滑走路で火災発生。なにが燃えてるんだろうね…。アナウンサーもまだわかっていなかった。すぐに、飛行機が燃えている画面。え。海保機と衝突って言ってる? 

気になりつつ家を出て、スマホのX画面を何度も更新しながら電車を乗り継いでいく。みんななりゆきに釘づけ。ビールを買って着いたら、迎えてくれた友だちが言った。日航機の話、知ってる?

知ってる、どうなった?

……新潟に救援物資を届けるところだったらしい。もう日本の、私の普通のお正月ではないことは昨日からわかっていたけれど、自分がいまどこにいてなにをしているのか、わからなくなった。一見、関係ないことのように思えても、すべてがつながっている。たまたま出たルーレットの目がいま違うだけ。

夜の日航の会見で、どこかの新聞記者が「御社の名誉がかかっていると思うんですが」と前置きをした上での原因追及をしていたらしい。役割の言葉で武装している、本当に自分の心や体から出てくるものから離れて久しいことが伝わってくる、なじみのある空虚な言葉遣い。

休日に召集がかかるのが嫌だったのは、こういう妙なアドレナリン満載の空気が嫌いだったからだな。ほんと向いてなかったなー。

今年は自分の内側から出てくる言葉をだいじにするし、フィットしない言葉は使わない。元旦の朝にそう決めていた。ま、そこから一歩ずつだわ。