農業のポッドキャストができない

eisub
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何をどうやっても「営農」という単語が入ってる限り、農業に関するポッドキャストに分類される。

目くじら立てて怒っていた時期もあったけど、いまはもうどうしようもないと諦めている。そもそも、なぜ分類されることに怒るのか、わかってもらうほうが無理がある。

名前を変えるのも考えたが、自身のアイデンティティが損なわれるので、変えられずにいる。現状、方々の失望を買いながら「農業をしてるはずのひとがなんとか触れた農業に関係のないものを話す」というポッドキャストにシフトしようとしている。

私は、たぶん、だいぶ前から、ポッドキャストで農業について話すのが生理的に無理になっている。

事実を話す、あったことを話す、怒っていることを話すはなんとなくやれるけれど、面白く話すのと楽しく話すことに強烈な心理的ブレーキがかかるようになっている。

たぶん、現状に怒り続けていて、その怒りの矛先がこちらに対して味方をしてくれそうな消費者や、農系として当番組を聴いてるリスナーにすら向いてしまう。

自虐ネタをおもしろおかしく話して、いざ笑いが起こるとマジギレするという人間地雷。迷惑極まりない。

基本的に、聴いてくださる方全員が好きなので、好きでいたいのだけど、「どうせ私のことなんか、バカ農業のひととか、農系ポッドキャストの変種って思ってるんでしょ!?」と面倒くさい感じになってしまう。

実のところ、私はこのことで現実的な不利益を自分から被っている。

「農家のポッドキャスト配信者」として来た依頼とか取材とかをかなり断ってきた。報酬があるのも、ないのも、仕事を選んだきた、といえばカッコいいのだけど、嫌な仕事をしたくなかっただけだ。嫌な仕事なら、地元でほぼ無償で嫌というほどやってるからポッドキャストでは勘弁してくれ、というだけだ。

ただ、ときおり、私のポッドキャストでの悪目立ちを知っている地元の人から「知名度増えないのー」とか「PRやれないのー」とフワッと言われるたびに申し訳なさを感じる。農家のポッドキャストでござい、とやってたほうが得だったろうなと思うこともあるけれど、自我(エゴ)を優先してしまった結果なのでどうしようもない。

そして、ながらく農業のポッドキャストとして見られてきて、私は農系リスナーに対する「やだみ」を感じる瞬間が、まあまあある。味方、のはずのひとから「やだみ」を感じるとは何事だって、私自身、思うけれど、嫌なものは嫌なのでしかたない。

たとえば、「農家さんは大変なんですね」という共感というか憐れみ様なもの。こちらをモンドフィルムかなんかのように「どこか遠くの、残酷な、別の現実」として消費するような目線。

これは、どこのイベントでも、どこの直売所でも、どこの異業種交流でも、少なからず浴びせかけられる視線で、慣れっこといえば慣れっこだ。

そうなんですー、資材費が高騰してるのに単価があがらないんですー、と卑屈にならないギリギリの態度でやんわりと交わして対応するような感情労働を我々は多かれ少なかれやっている。実のところ、そういった目線を向ける人々に感謝してしまうことのほうが多い。

が、たぶん、関わるたびに、何かしらの尊厳を、ちょっとずつ毀損されている。気がしている。

仕事で向けられるのは良いけれど、ポッドキャストでそれを向けられるのは、私は、いやだな、と感じる。これは、私が、農業よりもポッドキャストが好きで、プライベート(生業としての農業)の切り売りをするのを良しとしてないからだと思う。

この辺の折り合いをつけることが、今後の課題だろうな。なにも、答えはでずに人生は続く。

@eisub
ポッドキャストをやってます。