出張から戻って会社に顔を出したら、いつもより早く家に帰れることになった。それならとスーパーに寄って今晩の豚汁の材料とアジフライを2人分買って帰る。山羊くんにメッセージを送ったら既読はつかなかったけど、まだ仕事中なら仕方ない。
山羊くんは僕がいないあいだ無事に過ごせただろうか。日頃からしっかりしている山羊くんなら心配ないよねって一緒に住む前は思っていたけど、以前長めの出張から帰った時にはその後一週間くらい無意識にくっついてきてて、相当寂しかったんだろうなって思い知らされた。山羊くんごめんね、可愛かったなぁなんて思って。山羊くんは寂しかったなんて口に出しては言わなかったけど、態度にはしっかり出ちゃってるんだよね。それでいて自分の気持ちには無自覚で、その時は寂しかったことに気づいてなかったんだろうけど。
荷解きして洗濯をしてご飯の支度をしていたら、なんと山羊くんが帰宅。まだ定時よりだいぶ前だ。そして両手になにやら大量に荷物を持っていた。
「あっえっ。お、おかえり天秤!早いな!」
ただいま、山羊くんこそどうしたの?と聞いたら、僕が帰る前にご飯とか作って待ってようと早退したらしい。山羊くんが早退って、僕が風邪を引いた時以来だね。それにしては数日分ありそうな量の買い物だと袋の中を覗いたら、僕の好きなものばかり……
「あっ、いや、これは……天秤が好きなもの、なにがいいか迷って。結局、全部買ってきてしまったんだ……」
真っ赤になって俯いて段々小さくなる声。ちょっとなにそれ、可愛すぎるでしょ!そっと荷物をテーブルに置いて、改めておかえりとただいまのハグをする。いつもより苦しいくらいぎゅうぎゅうだ。
「寂しかったから、2日分の充電が必要なんだ」
なんて山羊くんが素直にぎゅうぎゅう抱きしめてくるから、2日分と言わずもういい!って言うまで、めちゃくちゃ甘やかしてやろうと決めた。
まずは2人であったかいご飯を食べよう。
(天くんの日記より)