とはいえ感想らしい感想を書ける気がしないでいるので、期待しないでいただきたい。(ハードルを下げておくずるい奴)
まず私のプロフィールとしては、この監督の映画は一切観たことがないし、オッペンハイマーについても全く知らなかった。自分の恥を晒すようであまり気が進まないのだけれど、歴史の勉強はほとんどしていないといっても過言ではないので、歴史的な文脈もほぼ知らず、こういうジャンルの映画もそんなに観たことがないと思う。自分ならまず観ない映画だけれど、パートナーに誘われたので観たという感じである。
ここからは感想になる。見応えはとてもあり、緊張感が続くので観終わった後はスポーツをした後のようにくたびれた。内容的に「めっちゃ面白かったね!!」という明るい感じではないのだけれど、観なければよかったなというような気まずさもなくて、思っていたよりは楽しめた気がする。
しかし、始終過剰な演出と思われる光と音楽の刺激にやられて、その点はかなり不快だった。その意味で多分この監督の映画と私は相性が良くないのだと思う。映画とはこうあるべきだ、みたいな確固たる信念はないものの、私は静かな映像やさり気ない音の演出が普段好きなので、コテコテに付けられた音楽とオッペンハイマーの想起していると思われるシーンでのド派手な映像などは受け入れ難かったらしい。この辺は好みなので批判ではない。ただ、美しい映像と音楽のみを取り出して鑑賞した場合、MVとしては非常にクオリティーが高くて良いものだと思った。上手く表現できないのだけれど、映画としてでなく、ストーリー性などを省いた映像作品として観たい感じはあった。
そして観た限り、歴史的な文脈をなぞって問題提起をしたいタイプの作品ではないように思えた。その辺りは淡々と描かれていて(考えたい人は考えても良いのだろうが)、注力したい箇所、表現したい箇所はオッペンハイマーの空想の世界、固有の世界観を具現化することだったのではないかと思えた(パートナー談)。オッペンハイマー自身が理論的な世界にある自分のイマジネーションを核兵器というものに具現化したように、監督のノーランもオッペンハイマーの世界をモチーフに、一つの映画作品として自身のイメージを具現化したかったように感じる。なぜなら、複数の視点や前後する出来事、空想と現実が入り組んでいるような作品構成は、人の記憶や想像といった、頭の中での形に近い構成になっているからだ。
個人的に一番面白かったのはアインシュタイン役の人の演技が予想を超えて遥かにアインシュタインっぽいところだった。アインシュタインっぽさがなんなのか自分でよく分かっていないのだけれど、演技を見て彼は本当にこういう人だったのかもと思わせるくらいの説得力を感じた。
もう一度観たいかと問われると返事に困るくらい長く感じたので、多分もう観ないと思うけれど、良い体験になったなと思う。そしてやっぱり、歴史を一から勉強しないといけない……。無知無知にもほどがあるよ。